キャラクターの作成


■背景と導入
 本キャンペーンでは、PCたちは全員で最初から冒険者としてパーティを組んでいる状態で、遺跡探索の過程で<バルバロスブラッド>を使用することになるオープニングをはじめます。
 冒険の開始地点はザルツ地方にあるルキスラ帝国(⇒『T』324頁)の首都ルキスラで、オープニング終了後、レーゼルドーン大陸エイギア地方に存在する<霧の街>(⇒『U』174頁)の地下に広がる《ミストグレイヴ》の冒険に赴くことになります。
 PC間の人間関係などは相談の上、自由に設定してください。もちろん、冒険が始まってから徐々に考えてもらっても構いません。

■種族
 ルールブックや各種サプリメントに記載されている「人族」に分類される全種族から選択できます。蛮族のPCは、種族や背景に関わらず選択できません。
 選択した種族とは別に、後述する「<バルバロスブラッド>の効果」で変身する上位蛮族を選びますが、“穢れ”を得ないルーンフォークやフィーのPCは、このときに選択肢が限定されます。
 また、生来“穢れ”を持つナイトメアのPCは、<バルバロスブラッド>の効果が他の種族より強く現れるため、選んだ上位蛮族によってはかなり極端な能力値を得ることがあります。

■作成
 生まれ表は任意で選んでかまいません。能力値は3セットをダイスで決定し、好きなセットを選択してください。経験点を+500点、所持金を+800ガメル(計2.000ガメル)、能力値の成長を1回加えてキャラクターを作成します。経歴は、合計3つまで取得できます。なお、作成時にはPC間でのお金の貸し借りはしないようにしてください。

■選択ルール
 『ルールブックU』35〜37頁、『アルケミスト・ワークス(以降AW)』67〜70頁、『ウィザーズトゥーム(以降WT)』19頁に掲載された、すべての選択ルールを使用します。
 『AW』掲載の選択ルールは、キャラクター作成時においては、限られた一部のPCに選択肢を提示するものですので、所持していない人は気にしなくて構いません。

■技能について
 ルールブックや各種サプリメントに掲載されている、すべての技能を習得することができます。サプリメントで追加された技能のうち、デーモンルーラー技能を除いた以下の3つはサプリメントを所持していないPLも使用することができます。解説ページを作成してありますので、適宜参照してください。一部の省略されている記述の詳細はGMまで。

 ・アルケミスト技能 (『AW』掲載)
 ・ウォーリーダー技能(『カルディアグレイス(以降CG)』掲載)
 ・ミスティック技能 (『CG』掲載)

 また、蛮族の支配領域《ミストグレイヴ》を舞台とする本キャンペーンでは、いくつかの技能に制限や注釈があります。以下を参照してください。

1)プリースト技能
 冒険の舞台である《ミストグレイブ》は、レーゼルドーン大陸のエイギア地方に存在します。このため、「テラスティア大陸全体」にその力を行き渡らせる大神(メジャー・ゴッド)、「地方ひとつ」を勢力圏とする小神(マイナー・ゴッド)を信仰するプリーストは、神聖魔法を行使するとき、「神の力と影響圏(⇒『WT』45頁)」にある消費MP増加の影響を受けます。《ミストグレイヴ》内では「ほこら」を作成することも困難であり、これらの神を信仰することを望むなら、ゲーム的な不利を甘受しなければなりません。
 また、第二の剣の陣営に属する神々を信仰する蛮族の支配領域において、第一の剣の陣営に属する神々を信仰していることが露見すれば、周囲の蛮族から激しい敵意にさらされます。《ミストグレイヴ》内では「不特定多数の蛮族が存在する」、つまり人目がある場所とそうでない場所が明確に分けられており、人目のある場所で「第一の剣の陣営に属する神のプリースト」にしか使えない神聖魔法(【バニッシュ】や【セイクリッド・ウェポン】、各種の特殊神聖魔法)を行使することは極めて危険です。特殊神聖魔法の内容から宗派を決めるときには、頭の隅に留めておいてください。
 なお、PCが“風来神”ル=ロウドを除く、第二の剣の陣営に属する神を信仰することはできません。

2)ライダー技能
 本キャンペーンでは、キャラクター作成時に騎獣をレンタルしていても、その騎獣を《ミストグレイヴ》内に連れて行くことはできません。騎獣を利用するためには、冒険の過程で騎獣を販売している場所などを見つけなければならず、その場合もレンタルすることはできません(蛮族社会で「借りた物を返す」を前提とした商売は成立しないのです)。
 このため、キャラクター作成時にライダー技能を習得することは推奨しません。冒険を進める中で騎獣を購入する算段をつけてから習得するほうが、経験点を有効活用できるでしょう。

3)アルケミスト技能
 錬金術は、魔動機文明時代後期に人族が独自に開発した技術であり、魔動機術以上に蛮族には馴染みのない存在です。このため、《ミストグレイヴ》内ではアルケミスト技能で用いる<マテリアルカード>が販売されておらず、その入手方法は戦利品からの抽出に限られます。<アルケミーキット>は流通しており、入手可能です。

4)デーモンルーラー技能
 デーモンルーラー技能によって行使できる召異魔法の中には、生贄を要求する、術者の外見を著しく変化させるなど、人族社会では犯罪行為と見なされる魔法が存在しています。しかし、《ミストグレイヴ》内はすべて蛮族社会として扱われるため、名称の前に(×)が記載されている魔法の行使や、魔神の召喚儀式、<魔神の苗床>の作成などを行っても罪に問われることはありません。
 もちろん「犯罪でなければ何をやってもいい」ということではありません。人目を気にせず【デモンズ〜】系の魔法を行使したり魔神を使役できる、程度の認識に留めておきましょう。

■<バルバロスブラッド>の効果
 PCがオープニングで使用することになる秘薬<バルバロスブラッド>は、使用者に次のような効果をもたらします。

1)穢れ度の獲得と姿の変化
 <バルバロスブラッド>を使用すると、即座に「穢れ度」が1点上昇し、トロール、ラミア、ドレイク、バジリスク、ミノタウロス、バルカンの6種の上位蛮族のうち、いずれかの姿に変身します。どの蛮族の姿になるかは、<バルバロスブラッド>1本ごとに定められており、PCたちが偶然入手したものは6種類が1本ずつです。プレイヤー諸氏は、誰がどの種類の蛮族に変わる<バルバロスブラッド>を飲むことになるか、相談の上で決定してください。
 ただし、“穢れ”を得ることがないルーンフォークやフィーのPCは「穢れ度」ではなく「変異度」を1点獲得し、使用した<バルバロスブラッド>の種類に関わらず、ミュータントと呼ばれる突然変異蛮族の姿に変身します。
 変身する各種族についての解説は、以下を参照してください。

トロール:『T』347頁、または『バルバロステイルズ(以降BT)』39頁。
ラミア:『T』348頁、または『BT』40頁。
ドレイク:『T』345頁、または『BT』42頁。
バジリスク:『U』238頁、または『BT』48頁。
ミノタウロス:『U』235頁、または『BT』42頁。
バルカン:人に近い体型ながら、両腕に鋭い爪、背中に皮膜の翼、頭部からドレイクにも似た角を生やした、魔神に似たシルエットを持つ蛮族です(悪魔人間、というと分かりやすいでしょうか)。本物のバルカンは、第二の剣イグニスに直接の信仰を捧げ、弱者や意志の弱い者を激しく憎む一方、同族や一度実力を認めたものには強い仲間意識を持つ独特の性格傾向を持っています。両手の甲には生まれつき、炎と土を司る<妖精使いの宝石>が填め込まれており、バルカン族独自の手法で妖精魔法を行使します。
ミュータント:何らかの(多くは魔法的な)要因によって突然変異を起こし、本来の種族から大きく逸脱した姿を持ってしまった蛮族です。大抵は余分な腕や脚、役に立たない感覚器官などを備えたデタラメな容貌を持ち、精神にも変調を来たしていることがほとんどです。<バルバロスブラッド>によって生まれたルーンフォークやフィーのミュータントの場合、こうした肉体変化は「(種族不明の蛮族と見なされる)外見だけ」に留まりますが、「変異度」が2点以上に増えると、実際に新たな(多くは不利な)種族特徴を獲得してしまうことがあります。

2)自動蘇生
 <バルバロスブラッド>の影響下にあるPCは、死亡した場合、しばらくして「直接的な死の危険がない」状況になった時点で自動的に蘇生します。この効果による蘇生を拒否することはできません。通常の蘇生と同様に、死亡直前から1時間前までの記憶は失われ、「穢れ度」が1点上昇します。蘇生を繰り返し、「穢れ度」が5点になってしまったPCはレブナント(⇒『T』389頁)化し、完全に失われます。
 ルーンフォークやフィーのPCも、他種族と同様に蘇生します。このとき、1年間の記憶が失われたり、蘇生の代価として魔晶石が求められることはありません。しかし、「穢れ度」の代わりに「変異度」が1点上昇し、新たな種族特徴を獲得する可能性があります。また、「変異度」が5点になると変異に耐えられず発狂してしまい、PCは完全に失われます。

3)能力値の修正
 <バルバロスブラッド>によって「穢れ度(または変異度)」を得たPCは、変化した蛮族の姿に応じていくつかの能力値が増減します。下記の表を参照してください。
 表にある数字は、「穢れ度(変異度)」1点につき修正される値です。ナイトメアのPCは、本来持っていた1点の「穢れ度」と合わせて、表にある数字を2倍にした修正を受けます。また、自動蘇生によって「穢れ度(変異度)」が上昇すれば、そのたびに修正される値が増えていきます(例えば、ミノタウロスに変身したナイトメアのPCは、1度目の自動蘇生で「穢れ度」が3点になるため、器用度が−3、筋力と生命力が+9、知力が−6されます)。
 プレイヤー諸氏は、PCのキャラクターシートの能力値欄に、成長による修正欄と合わせて穢れによる修正欄を設けてください。

【能力値修正表】
種族     器用度 敏捷度  筋力 生命力  知力 精神力
トロール    −1  −1  +3  +3  −1
ラミア                 −1  +1  +2
サキュバス       +1      −1  +1  +1
ドレイク    +1  −1  +1  +1
バジリスク           +1  +1  +1  −1
ミノタウロス  −1      +3  +3  −2
バルカン   任意の能力値2つを+1、任意の能力値1つを−1。修正する能力値はすべて異なるものでなければならず、一度決めたら穢れ度が上昇したときにも同じ能力値が増減する。
ミュータント 無作為に能力値1つを+3、無作為に能力値2つを−1。修正する能力値はすべて異なるものでなければならず、変異度が上昇したときは新たに増減する能力値を決定する。

4)蛮族としての種族特徴の獲得(この項目は、キャラクター作成時には影響しません)
 <バルバロスブラッド>の影響下にあるPCは、「穢れ度」が一定の値まで上昇すると、変化した蛮族の姿に応じて新たな種族特徴を獲得します。
 獲得する種族特徴と、それが発現する「穢れ度」の値は以下の通りです。

・トロール(穢れ度4で発現)
「☆限定再生」 補助動作で自らのHPを「冒険者レベル×5」点回復させます。この能力は1日に1回しか使えません。

・ラミア(穢れ度3で発現)
「○牙と吸血」 格闘武器<牙>(⇒『V』149頁)を得ます。また、<牙>の近接攻撃が命中した場合、適用ダメージと同じだけ、自らのHPが回復します。

・サキュバス(穢れ度3で発現)
「〆淫夢」 主動作で自らを中心に「半径20m」以内にいる任意のキャラクターすべてを眠りに誘い、淫らな夢を見せて精気を吸い取ります。自らの「冒険者レベル+精神力ボーナス」と対象の精神抵抗力で達成値を比べ合い、有利な結果を得た対象に「2d」点の呪い属性の魔法ダメージを与え、直後に眠らせます。同時に、適用ダメージの合計分、自身のHPが回復します。
 この効果は呪い属性であると同時に精神効果属性(弱)です。また、1日に1回しか使えません。

・ドレイク(穢れ度3で発現)
「○飛行」 背中の翼で空を飛んで移動できるようになります。移動速度は敏捷度と同じで、飛行中は近接攻撃の命中力・回避力判定に+1のボーナス修正を得ます。

・バジリスク(穢れ度4で発現)
「☆石化の視線」 補助動作で「射程:20m」「形状:射撃」として対象1体を睨みつけ、動きを鈍らせます。自らの「冒険者レベル+精神力ボーナス」と対象の精神抵抗力で達成値を比べ合い、有利な結果を得たなら、対象は命中力か回避力、ランダムに選ばれた一方に−1のペナルティ修正を受けます。いずれかのペナルティ修正が−3になった場合、対象を石化させて倒すことができます。
 この効果は呪い属性です。また、1ラウンドに1回しか使えず、使用するとMP5点を消費します。

・ミノタウロス(穢れ度3で発現)
「○剛力」 「用法:2H」の武器を用いて近接攻撃を行う場合、追加ダメージが+3点されます。

・バルカン(穢れ度4で発現)
「〆強制召喚」 主動作で自らの隣に、サラマンダー(⇒『U』293頁)とノーム(⇒『V』283頁)の2体を同時に召喚します。召喚された妖精は即座に行動でき、召喚者に30秒(3ラウンド)の間従い、その後の手番終了時に消滅します。この効果時間中は3体目以降の妖精を召喚できず、召喚者は妖精魔法を行使できません。
 この能力を使用すると、HPとMPがそれぞれ15点減少します。

・ミュータント(変異度2以降で、不確実に発現)
 ミュータントに発現する能力は36種類用意されています。ミュータントのPCは「変異度」が2以上に上昇するたび、「2d+上昇する前の変異度」し、結果が「10」以上であれば、ランダムに選ばれた3つの種族特徴から、1つを選んで獲得します。事前にこれらの種族特徴の内容を知ることはできません。

■言語について
 蛮族の支配領域を舞台とする本キャンペーンにおいて、最も多くのNPCが操れる言語は、汎用蛮族語です。しかし、人族の冒険者であり、予期せぬアクシデントをきっかけとして《ミストグレイヴ》に挑むことになったPCたちは、全員が汎用蛮族語を話せるわけではありません。
 また、狡猾な上位蛮族の中には、魔法やアイテムで蛮族に化けた人族の密偵を警戒している者もおり、PCが怪しい素振りを見せれば、PCが変身している種族の固有言語で話しかけ、反応を見るような知恵を働かせることもあります。
 このため、密偵として《ミストグレイヴ》に挑むPCは、汎用蛮族語の会話や読解、自らが変身した種族言語の会話を習得していることが望ましく、PCたちを送り出す密偵たちも短い期間で可能な限りの言語訓練をしてくれます。
 この表現として、オープニング終了後、各PCには作成時のものとは別に500点の経験点を配布します。この経験点は、この時点においてはセージ技能またはバード技能の習得及びレベル上昇にのみ費やすことができます。各PCは、この経験点を使って言語を覚えるか、あるいは「勉強したが身につかなかった」として経験点を温存し、第1話終了後に他の用途に費やすかを選択してください。
 理想はPC全員が「汎用蛮族語(会話)」と「変身した種族の固有言語(会話)」を習得し、誰か一人は「汎用蛮族語(読解)」を習得することですが、それには言語の取得枠が足りないはずです。何を優先すべきか各自で判断してください。
 なお、各種族の固有言語は以下の通りです。

 トロール  :巨人語
 ラミア   :ドレイク語
 ドレイク  :ドレイク語
 バジリスク :バジリスク語(一般にドレイク語も解する)
 ミノタウロス:ミノタウロス語
 バルカン  :バルカン語
 ミュータント:なし