ミスティック技能


 ミスティック技能は、占いの能力を持つ技能です。吉兆や凶兆を察知し、未来を予測する能力を持ちます。ミスティック技能はBテーブル技能であり、この技能の持ち主は占者と呼ばれます。
 占者の予測する未来は、そのまま何もしなければ起こるであろう、もっとも実現する確率の高い未来です。占者は、占瞳と呼ばれる能力により、それを変更し、より都合のよい未来を他者や自身にもたらすことができます。
 ミスティック技能では、以下の判定を行えます。

 ●占瞳の使用/占瞳判定
 ●探索判定(⇒『T』111頁)
 ●天候予測判定(⇒『T』111頁)


■占瞳
 占瞳は、占いや直感により、よりよい未来へ仲間や自身を導く技術です。キャラクターは、ミスティック技能を1レベル習得するごとに、1つの占瞳を習得できます。ミスティック技能が5レベル以上、または10レベル以上でなければ習得できない中位、上位の占瞳も存在します。
 占瞳は魔法ではないため、【センス・マジック】などには反応せず、【ディスペル・マジック】などによって解除されることもありません。また、持続時間を持つ占瞳は占者自身の意思で解除することも不可能です。すでに占瞳の効果を受けている対象には、特に記述がない限り、同名の占瞳が効果を表すことはありません。
 占瞳を使用する際、直接のコストは不要です。しかし、効果の一部として「代償」が発生することがほとんどです。「代償」は占者のHPやMPの減少で表されます。

■占瞳のタイプ
 占瞳には、大きく分けて「主動作型」と「幻視型」のふたつのタイプが存在します。

・主動作型占瞳
 主動作型占瞳は、占者が積極的に占いのための動作を行って使用するものです。「占具」と呼ばれる専用の道具を使い、より都合のいい未来をもたらします。主動作で使用します。

・幻視型占瞳
 幻視型占瞳は、都合の悪い事故や事件が起きることを事前に感知し、それを回避するものです。幻視型占瞳は、実際にセッションの中で不都合な事故や事件が発生してしまってから、その事態を占者が予知した未来の幻視だったとして、「なかったこと」にしてしまいます。プレイヤーの視点では、「時間を巻き戻してやり直す」という表現が適切でしょう。
 幻視型占瞳は、プレイヤーの宣言によって発動します。占瞳判定によって達成値を求めますが、性質上、その使用は「動作」ではなく、行動判定にも分類されません。移動方法の制限なども存在しません。
 使用を宣言できるタイミングは、不都合な事態が発生した直後に限られます。その事態のあと、さらなる事象が発生し、「時間が進んでしまった」後では使用できません。
 幻視型占瞳によって事象がやり直される場合、関係するすべてのキャラクターのHPやMPの状態などは、すべてそのやり直しになる時点のものに戻ります。その後、占者が払う「代償」の処理が行われ、やり直しの処理に移ります。
 幻視型占瞳の使用は、ひとつの事象に対し、同じ占者が複数回に渡って試みることはできません。1人の占者によって行えるやり直しの機会は1回だけです。

■占瞳の使用/占瞳判定
 占瞳を使用する際には、占瞳判定を行って達成値を求めます。占瞳判定の基準値は使用する占瞳によって異なり、ミスティック技能レベルに器用度、知力、精神力のいずれかの能力値ボーナスを加えて判定を行います。
 占者は、「対象:1体」の占瞳を自身に対して使用することもできますが、そのときには占瞳判定に−4のペナルティ修正を受けます(自分のことは占えない、というアレです)。
 すべての占瞳の効果は、対象に対しては「必中」として扱います。

■占瞳結果表
 占瞳は、同じ占瞳を使っても、占瞳判定の達成値によって効果が異なるという特徴を持っています。各占瞳には「占瞳結果表」が用意されており、得られた達成値をそれに当てはめて、結果を適用します。
 占瞳判定に自動失敗した場合、「占瞳結果表」の「自動失敗」の欄が適用されます。自動失敗以外では、どんなに達成値が低くともこの欄が適用されることはありません。ただし、占者は「占瞳結果表」の結果を、達成値を確認してから任意に「自動失敗」のものに変更しても構いません(代償が高くなり過ぎるなど、自動失敗のほうがマシ、という状況があり得ます)。
 占瞳判定に自動成功した場合、達成値に関わらず、任意の欄の結果を占者が選ぶことができます。一部の占瞳には「自動成功のみ」の欄があり、これは、占瞳判定が自動成功したときに限り、占者が選ぶことができます。

■占瞳の代償
 占瞳を使用した場合、占者は「占瞳結果表」に従って、HPまたはMPを消費しなければなりません。
 代償がMPである場合、占者のMPが減少します。その一部を<魔晶石>や使い魔のMPから補填することは構いません。もし、MPで代償を払い切れない場合、不足分はHPで払うことになります。MPに余裕があるときには、HPで代償を払うことはできません。
 代償がHPである場合、占者のHPが減少します。HPは0を通り越してマイナスになり得、代償はすべてHPの減少で払わなければなりません。
 代償がMP/HPとある場合、MPとHPを合計して、指定された点数を代償として支払います。振り分けは占者の任意で、MPに割り振った分では<魔晶石>や使い魔のMPが有効です。
 代償によるHPやMPの減少はダメージではないため、いっさいの魔法などによる軽減効果は無効です。唯一、ミスティック技能で有効な戦闘特技《代償軽減》《代償半減》によってのみ、HPやMPの減少を抑えることができます(代償が「0」まで軽減されることもあり得ます)。

■<占具>
 主動作型占瞳では、占瞳ごとに対応する<占具>が定められており、占者は対応する<占具>は両手に持っていなければ主動作型占瞳を使用できません。<占具>はいずれも、両手用武器に準じる扱いです。<占具>を用いるのに発声や動作は不要です。
 <占具>には器用度を基準値とする占瞳に対応する<ミスティックロッド>、知力に対応する<ミスティックカード>、精神力に対応する<ミスティックオーブ>の3種類があり、いずれもひとつ100Gです。


占瞳リスト

 占瞳はひとつひとつに「占瞳結果表」が付随し、文章量が非常に多くなるため、全占瞳を効果の方向性によって分類し、「占瞳結果表」については各分類ごと1例のみを記します。
 各占瞳の詳細は『カルディアグレイス』を参照してください。



■分類1:戦闘中以外で特定の判定にボーナス修正を与える占瞳(主動作型)

 戦闘中以外で対象が行う、特定の判定にボーナス修正を与える占瞳です。すべて「対象:1体」「射程:接触」であり、1レベルから習得できるものです。

【幸運は手指を助ける】  占具:ロッド  占瞳判定の基準値:器用度  時間:1時間〜1日
 対象が非戦闘時に行う、器用度を基準値とする行為判定にボーナス修正を与えます。

【幸運は動きを助ける】  占具:ロッド  占瞳判定の基準値:器用度  時間:1時間〜1日
 対象が非戦闘時に行う、敏捷度を基準値とする行為判定にボーナス修正を与えます。

【幸運は力を助ける】   占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力  時間:1時間〜1日
 対象が非戦闘時に行う、筋力を基準値とする行為判定にボーナス修正を与えます。

【幸運は知恵を助ける】  占具:カード  占瞳判定の基準値:知力   時間:1時間〜1日
 対象が非戦闘時に行う、知力を基準値とする行為判定にボーナス修正を与えます。

【幸運は勝ち戦を授ける】 占具:ロッド  占瞳判定の基準値:器用度  時間:1時間〜1日
 対象が戦闘開始時に行う、先制判定と魔物知識判定にボーナス修正を与えます。

【幸運は富をもたらす】  占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力  時間:10分
 対象が行う、戦利品判定にボーナス修正を与えます。

【幸運は手指を助ける】の占瞳結果表
達成値   結果
自動失敗  占者の手はかじかみ、満足に動かなくなる。翌日まで、占者は器用度を基準値に用いる行為判定すべてに−1のペナルティ修正。この効果は累積する。
〜7    幸運は微笑まず、効果なし。代償:HP4
8〜9   幸運は微笑まず、効果なし。代償:MP2
10〜12 対象は1時間の間、+1のボーナス修正を得る。代償:MP2
13〜15 対象は1時間の間、+2のボーナス修正を得る。代償:MP/HP8
16〜   対象は1日の間、+1のボーナス修正を得る。代償:MP3



■分類2:戦闘中に特定の判定にボーナス修正を与える占瞳(主動作型)

 戦闘中に特定の判定にボーナス修正を与える占瞳です。すべて「対象:1体」「射程:30m」「時間:10秒(1ラウンド)」です。

【星は剣を導く】       占具:ロッド  占瞳判定の基準値:器用度 (1レベルから習得可能)
 対象が行う命中力判定にボーナス修正を与えます。

【星は盾を掲げる】      占具:ロッド  占瞳判定の基準値:器用度 (1レベルから習得可能)
 対象が行う回避力判定にボーナス修正を与えます。

【星は札を翻す】       占具:カード  占瞳判定の基準値:知力  (1レベルから習得可能)
 対象が行う賦術の判定にボーナス修正を与えます。

【星は調べを誘う】      占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力 (1レベルから習得可能)
 対象が行う呪歌の判定にボーナス修正を与えます。

【星は安らぎをもたらす】   占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力 (1レベルから習得可能)
 対象が行う生命・精神抵抗力判定にボーナス修正を与えます。

【光る星は弱点を暴く】    占具:ロッド  占瞳判定の基準値:器用度 (5レベルから習得可能)
 対象が行う攻撃のクリティカル値を低下させます。

【光る星は神秘を誘う】    占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力 (5レベルから習得可能)
 対象が行う行使判定にボーナス修正を与えます。

【光り輝く星は高みへと導く】 占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力 (10レベルから習得可能)
 対象が行うすべての行為判定にボーナス修正を与えます。

【星は剣を導く】の占瞳結果表
達成値    結果
自動失敗   使用したロッドは破壊され、占者は10秒(1ラウンド)の間、無数の光る三角を空中に見る。行為判定にペナルティ修正はない。
〜6     星は導かず、効果なし。代償:HP4
7〜8    星は導かず、効果なし。代償:MP2
9〜13   対象は+1のボーナス修正を得る。代償:MP2
14〜16  対象は+2のボーナス修正を得る。代償:MP/HP10
17〜    新たに自身以外の任意のキャラクター1体を選び、追加の対象とすることができる。すべての対象は、+2のボーナス修正を得る。代償:MP3
自動成功のみ 対象の命中力判定は自動成功となる。代償:MP3



■分類3:未来に関する手がかりを得る占瞳(主動作型)

 GMから直接、占瞳に対応した情報などを得る占瞳です。

【幸運の星の導きを知る】 占具:任意  占瞳判定の基準値:占具に依存  対象:1体  射程:接触  時間:1日 (1レベルから習得可能)
 対象に幸運をもたらす色やアイテム、方角や場所などを占います。占瞳結果表が「幸運の鍵を占えた」にとなった場合、GMはシナリオを考慮し、その解決の鍵やヒントとなる色、アイテム、場所、方角などをひとつ、「ラッキー○○」として明らかにします。ここに挙げたもの以外でも、GMが思いつくものがあるならば、それを教えてかまいません。鍵やヒントは、直接にシナリオを解決してしまえるものでなくともかまいません。それを知ることが、何らかの有利に働くならば十分です。GMが何も思いつかない場合には、適当に答えてかまいませんが、その旨はプレイヤーに伝えるようにします。
 この占瞳は、同じ対象には1日に1回しか使えません。また、同じパーティで複数のキャラクターに使ったり、シナリオの途中に日を改めて使っても、同じ答えばかり返ってくるのは容易に想像できる事態です。

【凶星の光を避ける道を知る】 占具:任意  占瞳判定の基準値:占具に依存  対象:1体  射程:接触  時間:1日 (5レベルから習得可能)
 対象が遭遇するであろう危険を予測します。占瞳結果表が「危険を占えた」となった場合、GMはシナリオに登場する罠や魔物のうち、もっとも危険、あるいは特徴的なものを選択し、それを避けるために有効な判定やゲームデータを提示します。たとえば、ボス敵が強力な魔法使いなら精神抵抗力判定ですし、「必中」で物理ダメージを与えてくるならば、防護点でも構いません。
 この占瞳は、同じ対象には1日に1回しか使えません。また、同じパーティで複数のキャラクターに使ったり、シナリオの途中に日を改めて使っても、同じ答えばかり返ってくるのは容易に想像できる事態です。

【賢星に語らるべかりし言葉を問う】 占具:オーブ  占瞳判定の基準値:精神力  対象:情報ひとつ  射程:無限  時間:一瞬 (5レベルから習得可能)
 他者との交渉や、しかるべき文献調査を行っていれば得られたはずの情報を、占いによって突き止めます。得られる情報がどの程度のものかはシナリオとGMに依存し、適切な交渉や、判定の成功があれば得られていたはずの情報が与えられます。シナリオ上、獲得の手段を設定されていないような情報は得られません。
 この占瞳をひとつの情報に対して、同じ占者が複数回行おうとすれば、2回目以降は必ず自動失敗します。シナリオに複数の情報源が設定されていても、得られる情報が同一であるなら、自動失敗とならないのは最初の一回だけです。

【凶星の光を避ける道を知る】の占瞳結果表
達成値    結果
自動失敗   不幸の星が占者につきまとう。翌日まで、占者の行うすべての行為判定に−1のペナルティ修正。この効果は累積する。
〜9     星は見えず、効果なし。代償:HP6
10〜14  星は見えず、効果なし。代償:MP3
15〜16  危険を占えた。代償:MP3
17〜18  危険を占えた。かつ、GMはその危険に対し、判定の目標値や想定できるダメージなど、具体的な数値をひとつ明らかにする。代償:HP/MP20
19〜    危険を占えた。かつ、GMはその危険に対し、判定の目標値や想定できるダメージなど、具体的な数値をひとつ明らかにする。代償:MP3



■分類4:起こるであろう未来を見通し覆す占瞳(幻視型)
 幻視型占瞳です。【無なる不備の幻影】を除き、「対象:1体」「射程:30m」「時間:一瞬」であり、判定のやり直しを可能とします。

【怒れる言葉の幻】   占瞳判定の基準値:精神力 (5レベルから習得可能)
 不適切な態度や言葉によって、NPCとの交渉や会話が不都合な状態になった場合、それを幻視であったとしてやり直します。NPCが態度を硬化させるなどがあった後、交渉などが打ち切られる直前まで、任意のタイミングで使用可能です。

【崩れる壁の幻】    占瞳判定の基準値:知力  (5レベルから習得可能)
 罠によって不都合な状態になった場合、それを幻視であったとしてやり直します。罠にかかった直後、ダメージ決定などが行われるまでに、使用の宣言を行います。

【背後から迫る闇の幻】 占瞳判定の基準値:知力  (5レベルから習得可能)
 危険感知判定が行われ、その失敗で不都合な状態になった場合、それを幻視であったとしてやり直します。危険感知判定に失敗した直後に、使用の宣言を行います。

【襲い掛かる敵の幻】  占瞳判定の基準値:精神力 (5レベルから習得可能)
 先制判定に敗れて、先手を取られたとき、それを幻視であったとしてやり直します。先制判定に敗れた直後、戦闘が開始される前に、使用の宣言を行います。

【黒き死の幻影】    占瞳判定の基準値:精神力 (10レベルから習得可能)
 生死判定に失敗してキャラクターが死亡した場合、それを幻視であったとしてやり直します。生死判定に失敗した直後に、使用の宣言を行います。

【灰色なる敗北の幻影】 占瞳判定の基準値:知力  (10レベルから習得可能)
 戦闘中の行動判定の結果が占者にとって不都合となったとき、それを幻視であったとしてやり直します。戦闘の開始から終了までの任意のタイミングで使用可能です。この占瞳の効果でやり直した戦闘では、同一の占者が、この占瞳を再び用いることはできません。

【無なる不備の幻影】  占瞳判定の基準値:器用度 (10レベルから習得可能) 対象:占者  射程:無限  時間:一瞬
 いざ特定の物品が必要と感じながら、それを持っていないという不都合があったとき、それが幻視であったとして、用意していたことにします。任意のタイミングで使用可能です。
 物品は、占者があらかじめ買っていたものとして扱われます。ゆえに、市場で取引されているものであり、かつ、過去に占者が手に入れる機会があったものに限られます。占者は物品を正規に購入するときに必要な金額を、所持金から減らさねばなりません。
 この占瞳は、何度でも使用可能です。もちろん、代償はその都度、必要です。

【背後から迫る闇の幻】の占瞳結果表
達成値    結果
自動失敗   幻視のままに事態は進み、何も変わらない。代償:HP20
〜12    幻視のままに事態は進み、何も変わらない。代償:HP6
13〜14  幻視のままに事態は進み、何も変わらない。代償:MP3
15〜16  危険感知判定をやり直す。代償:MP3
17〜18  同時に危険感知判定を行ったすべてのキャラクターが+2のボーナス修正を得た上で危険感知判定をやり直す。代償:MP/HP20
19〜    同時に危険感知判定を行ったすべてのキャラクターが+2のボーナス修正を得た上で危険感知判定をやり直す。代償:MP5
自動成功のみ 危険感知判定に成功したものとしてゲームを進める。代償:MP5


■ミスティック技能に有用な戦闘特技

・常に効果を発揮する戦闘特技

《自己占瞳》 前提:ミスティック技能5以上
 占者は、「対象:1体」の占瞳を、自分自身を対象として使用するときに、占瞳判定に−4のペナルティ修正を受けません。また、《双占瞳》の戦闘特技や、占瞳結果表での指示を受けて対象を増やすとき、占者自身を選択できるようになります。

《占瞳操作》 前提:ミスティック技能5以上
 占者は、自身の行った占瞳判定の達成値を、それを確認した後で、プラス1またはマイナス1することができます。

《代償軽減》 前提:ミスティック技能5以上
 占瞳結果表で指示された代償が、−1されます。

《代償半減》 前提:《代償軽減》
 占瞳結果表で指示された代償が、半減(端数切り上げ)されます。その後、さらに《代償軽減》による−1も適用されます。

・宣言が必要な戦闘特技

《双占瞳》 前提:ミスティック技能9以上
 「対象:1体」の占瞳を使用する場合、その対象を「2体」に変更します。占瞳判定はまとめて1回で行われ、代償も1回のみです。《自己占瞳》を習得していない場合、対象に占者自身を含めることはできません。