アルケミスト技能


 アルケミスト技能は、アイテムの加工や合成を行う他、賦術と呼ばれる魔法にも似た特殊な技術を使用する技能です。アルケミスト技能を持つ者は錬金術師と呼ばれます。
 アルケミスト技能の能力として特筆すべき2つは、「アイテムの加工・合成」と「賦術」ですが、この解説ページでは、賦術のみに焦点を当てています。ある程度の時間と専用の工房を必要とする「アイテムの加工・合成」については、『アルケミスト・ワークス』を参照してください。
 アルケミスト技能では、以下の判定を行えます。

 ●賦術の使用/賦術判定
 ●加工判定(⇒『アルケミスト・ワークス』132頁)
 ●見識判定(⇒『T』103頁)
 ●文献判定(⇒『T』112頁)
 ●薬品学判定(⇒『T』113頁)


■賦術
 賦術は魔法に似た効果を持ちますが、直接敵を害するような効果を持たず、コストとしてMPではなく<マテリアルカード>という専用のアイテムを消費します。<マテリアルカード>は、様々な物質の本質的要素とされる「第一原質」を抽出して成型したもので、これに込められた「物質の本質」を変換することで賦術は効果を発揮します。
 PCは、アルケミスト技能を1レベル習得するごとに、1つの賦術を習得できます。アルケミスト技能が5レベル以上、または10レベル以上でなければ習得できない中位、上位の賦術も存在します。
 賦術を使用するためには、<マテリアルカード>と、それを収納するための<アルケミーキット>が必要です。<アルケミーキット>は200ガメルで購入できる装飾品で、「右手」「左手」「腰」「その他」のいずれかの部位に装備します。これを装備せず、手に持った<マテリアルカード>だけで賦術を使うことはできません。<マテリアルカード>については後述します。
 賦術は、以下の性質を持ちます。

主動作か補助動作、どちらかで1ラウンドに1回
 賦術は主動作、もしくは補助動作で使用できます。ただし、1ラウンドに主動作と補助動作の両方で使用することはできず、補助動作で使用する場合には1ラウンドに1回しか使用できません。
 主動作で使用する場合、戦闘特技《ファストアクション》などによって複数回の主動作が行えるなら、それぞれで賦術を使用できます。

通常移動からでも使用可能
 魔法と異なり、賦術は「通常移動」しながら使用することが可能です。

対象を増やすのに《魔法拡大/数》は不要
 すべての賦術は「対象:1体」であり、主動作で使用するときに限り、対象数を増やすことができます。コストである<マテリアルカード>の消費は対象数に応じて増加しますが、この「対象を増やす」行為に戦闘特技の習得や宣言は不要です。一方で、《魔法拡大/時間》や《魔法拡大/距離》などの魔法に対応した戦闘特技によって、賦術の効果を変更することはできません。

魔法とは似て非なるもの
 賦術は魔法ではないため、【センス・マジック】などには反応せず、【ディスペル・マジック】などによって解除されることもありません。持続時間を持つ賦術は、錬金術師自身が望むなら、補助動作で任意に解除することが可能です。すでに賦術の効果を受けている対象には、同名の賦術が効果を表すことはありません。

誤射を防ぐには《魔法誘導》ではなく《精密射撃》
 「形状:射撃」の賦術を、乱戦エリア外から乱戦エリア内に向けて使用する場合、誤射が発生します。戦闘特技《精密射撃》を習得していれば、これを防ぐことができます。《魔法誘導》は役に立ちません。

■主動作で賦術を使用する
 主動作で賦術を使用する場合、魔法の行使判定と同様に「アルケミスト技能+知力ボーナス」を基準値として行為判定を行います。判定が自動失敗(1ゾロ)であれば、賦術は効果を発揮せず、費やした<マテリアルカード>はすべて無駄に失われます。
 対象に抵抗の意思がある場合、賦術の行為判定と対象の精神抵抗力判定との間で達成値を比べ合い、錬金術師が有利な結果を得られなかった場合には、賦術は完全には効果を発揮しません。
 主動作で賦術を使用する場合、前述の通り、任意に対象数を増やすことができます。このとき、消費する<マテリアルカード>の枚数は、《魔法拡大/数》におけるMPと同様に倍化されます。なお、このとき同時に消費される<マテリアルカード>は、すべて同じランク(後述)のものでなければなりません。

■補助動作で賦術を使用する
 補助動作で賦術を使用する場合、行為判定は行わず、自動的に達成値「0」として扱われます(つまり、1ゾロによる自動失敗は起こりません)。対象に抵抗の意思があれば自動的に抵抗されてしまいますが、賦術には「抵抗:短縮」(抵抗されても1ラウンドだけ効果がある)のものがいくつか存在しているため、最初から1ラウンドしか効果がないものと割り切る使用方法も存在します。
 補助動作で賦術を使用できるのは、1ラウンドに1回だけです。また、使用タイミングは主動作の前に限られます。1度でも主動作を行ったなら、補助動作で賦術を使用することはできません。

■<マテリアルカード>
 賦術に必要な<マテリアルカード>には、「色」と「ランク」という2つの概念があります。
 <マテリアルカード>の色は、白、黒、赤、緑、金の5種類で、込められた力の性質を現しています。すべての賦術には、その賦術に対応した色が原則として1つだけ定められており、その色の<マテリアルカード>を消費しなければ効果が得られません。
 <マテリアルカード>のランクは、Bランク、Aランク、Sランク、SSランクの4種類で、消費した<マテリアルカード>のランクが高いほど、同じ賦術でも効果が高まります。一方で、<マテリアルカード>はランクが1段階高くなるたびに価格が10倍になるため、高いランクの<マテリアルカード>の乱用は財政を圧迫することになるでしょう。
 <マテリアルカード>はマギテック協会などで販売されており、価格は色に関係なくBランクが20ガメル、Aランクが200ガメル、Sランクが2.000ガメル、SSランクが20,000ガメルです。

粗製の<マテリアルカード>
 賦術の使い手は、事前に自分の使う賦術に必要な色とランクの<マテリアルカード>をマギテック協会などで購入して準備しますが、<マテリアルカード>を販売している機関が存在しない場所や、あるいは冒険の途中で<マテリアルカード>を切らしてしまった時には、<アルケミーキット>を用いて魔物から獲得した戦利品を粗製の<マテリアルカード>に変換することができます。
 粗製の<マテリアルカード>は、その効果においては正規に販売している<マテリアルカード>とまったく同じですが、色とランクは変換元の戦利品の価値と性質に依存します。例えば、ゴブリンの戦利品である<意匠を凝らした武器>には(150G/黒白A)という価値が付記されています。これは150ガメルで売却できると同時に、黒または白のAランク<マテリアルカード>に変換できることを表しています。
 戦利品を粗製カードに変換しても、その価値は失われません。粗製カードは、変換元の戦利品と同じ価格で売却することができます。

■賦術リスト
 以下は、賦術のリストです。すべての賦術は「対象:1体」として扱います。
 「消費」の項には、その賦術を使用するためにどの色の<マテリアルカード>が必要であるかが書かれています。×2や×3とある場合、同じランクの<マテリアルカード>が2枚や3枚必要です。
 「効果」の項の末尾には、消費した<マテリアルカード>のランクごとに異なる効果が書かれています。あるランクの効果に「―」とある場合、そのランクでは一切効果がないことを表します。

1レベルから習得可能な賦術

 【インスタントウェポン】
消費:白 射程/形状:10m/射撃 時間:1ラウンド 抵抗:なし
効果:任意のカテゴリの近接武器を作成し、対象に渡します。この武器には特殊効果はなく、必要筋力は1、クリティカル値は10で統一されています。威力はランクごとに異なります。
〔B:威力10 A:威力20 S:威力40 SS:威力80〕

 【ヴォーパルウェポン】
消費:赤 射程/形状:10m/起点指定 時間:18ラウンド 抵抗:なし
効果:対象が与える物理ダメージを上昇させます。
〔B:+1 A:+2 S:+4 SS:+8〕

 【クラッシュファング】
消費:赤 射程/形状:10m/起点指定 時間:6ラウンド 抵抗:短縮
効果:対象が与える物理ダメージを減少させます。
〔B:−1 A:−3 S:−5 SS:−10〕

 【クリティカルレイ】
消費:金 射程/形状:接触/― 時間:1ラウンド 抵抗:なし
効果:対象が近接攻撃、射撃攻撃を行った場合、威力決定時の2dの出目を上昇させます。この効果でクリティカル値以上となった場合、クリティカルが発生します。
   この効果で出目は13以上にはなりません。また、この効果で出目が上昇するのは1回だけで、最初に威力決定の2dを振ったとき、自動的に適用されます。
   この効果はカテゴリ<ガン>には適用されません。また、威力決定で1ゾロを振ったときには出目の上昇に関係なく、ダメージは与えられません。
〔B:出目+1 A:出目+2 S:出目+3 SS:出目+6〕

 【バークメイル】
消費:緑 射程/形状:30m/起点指定 時間:18ラウンド 抵抗:なし
効果:対象の防護点を上昇させます。
〔B:+1 A:+2 S:+4 SS:+8〕

 【パラライズミスト】
消費:緑 射程/形状:30m/起点指定 時間:6ラウンド 抵抗:短縮
効果:対象の回避力判定にペナルティ修正を与えます。
〔B:−1 A:−2 S:−3、この賦術への抵抗に−2のペナルティ修正 SS:−4、この賦術への抵抗に−4のペナルティ修正〕

 【ポイズンニードル】
消費:黒 射程/形状:10m/射撃 時間:6ラウンド 抵抗:短縮
効果:対象は、手番終了時を迎えるたびに毒属性の魔法ダメージを受けます。【キュア・ポイズン】の魔法などで解除することができます。
〔B:1点 A:3点 S:5点 SS:10点〕

 【ミラージュデイズ】
消費:白 射程/形状:10m/起点指定 時間:1ラウンド 抵抗:消滅
効果:対象の命中力判定にペナルティ修正を与えます。
〔B:−2 A:−4 S:−6 SS:−8、主動作で使用した場合「抵抗:必中」〕

5レベルから習得可能な賦術

 【アーマーラスト】
消費:黒×2 射程/形状:10m/射撃 時間:6ラウンド 抵抗:短縮
効果:対象の防護点を低下させます。
〔B:−1 A:−3 S:−5 SS:−10〕

 【アンロックニードル】
消費:黒 射程/形状:接触/― 時間:一瞬 抵抗:なし
効果:例外的に「物体ひとつ」を対象とします。この賦術のランクに応じた数値を、解除判定の達成値として扱い、鍵や罠を解除できます。魔法の罠や鍵にも有効です。
〔B:12 A:16 S:20 SS:40、かつ自動成功として扱う〕

 【イニシアティブブースト】
消費:赤 射程/形状:10m/起点指定 時間:一瞬 抵抗:なし
効果:先制判定を行う直前に使用でき、対象の先制判定にボーナス修正を与えます。この賦術は判定1回にしか効果がありません。先制判定の機会が発生するたびに使用できますが、この賦術の効果を受けた対象が先制判定を行った後、その結果を確認してから、同じ戦闘での先制判定を行う別の対象に使用することはできません。
〔B:+1 A:+2 S:+4 SS:先制判定を行わず、自動成功として扱う〕

 【エンサイクロペディア】
消費:白 射程/形状:10m/起点指定 時間:一瞬 抵抗:なし
効果:魔物知識判定を行う直前に使用でき、対象の魔物知識判定にボーナス修正を与えます。この賦術は判定1回にしか効果がありません。魔物知識判定の機会が発生するたびに使用できますが、この賦術の効果を受けた対象が魔物知識判定を行った後、その結果を確認してから、同じ魔物への魔物知識判定を行う別の対象に使用することはできません。
〔B:+1 A:+2 S:+4 SS:先制判定を行わず、自動成功として扱う〕

 【グレイテストフォーチュン】
消費:金×2 射程/形状:30m/起点指定 時間:特殊 抵抗:なし
効果:対象は行為判定、威力決定のサイコロを振るとき、「2d」ではなく「1d×2」を出目とします。「2(1×2)」は自動失敗、「12(6×2)」は自動成功です。
   この賦術は補助動作でしか使えません。また、ランクによって効果時間が異なります。
〔B:― A:1ラウンド S:3ラウンド SS:18ラウンド〕

 【コンセントレーション】
消費:金×2 射程/形状:10m/射撃 時間:1ラウンド 抵抗:なし
効果:対象が魔法や錬技などで消費するMPを軽減します(最低1)。《魔法拡大/数》などで消費MPが倍化される場合には、軽減後の値を倍化します。
   この賦術は補助動作でしか使えません。
〔B:― A:−1 S:−2 SS:−4〕

 【ディスペルニードル】
消費:黒 射程/形状:10m/射撃 時間:一瞬 抵抗:消滅
効果:対象が継続して受けている「錬技」「呪歌」「賦術」「魔物の特殊能力」による効果を、すべて解除します。ただし、魔法による効果や、毒・呪い属性の効果は解除できません。
   解除する効果との間で、それぞれ達成値の比べ合いが必要です。また、ランクによってこの賦術の達成値にボーナス修正を得られます。
〔B:ボーナスなし A:+2 S:+4 SS:主動作で使用した場合、自動成功〕

 【バインドアビリティ】
消費:白×2 射程/形状:10m/起点指定 時間:6ラウンド 抵抗:短縮
効果:対象が主動作で使用できる特殊能力(魔法を除く)の達成値にペナルティ修正を与えます。
〔B:−1 A:−2 S:−3 SS:−4、主動作で使用した場合「抵抗:必中」〕

 【ヒールスプレー】
消費:緑×2 射程/形状:10m/射撃 時間:一瞬 抵抗:なし
効果:対象のHPを回復させます。
〔B:― A:5点 S:20点 SS:50点〕

 【ビビッドリキッド】
消費:緑×2 射程/形状:接触/― 時間:一瞬 抵抗:なし
効果:対象のMPを回復させます。
〔B:― A:2点 S:5点 SS:20点〕

 【マナダウン】
消費:金 射程/形状:30m/起点指定 時間:6ラウンド 抵抗:短縮
効果:対象が発生させる、あらゆる魔法ダメージを減少させます。
〔B:−1 A:−2 S:−4 SS:−8〕

 【リーンフォース】
消費:赤×2 射程/形状:接触/― 時間:18ラウンド 抵抗:なし
効果:対象が主動作で与える魔法ダメージを上昇させます。
〔B:― A:+1 S:+2 SS:+4〕

10レベルから習得可能な賦術

 10レベルから習得可能な賦術については、『アルケミスト・ワークス』16頁を参照してください。


■アルケミスト技能に有用な戦闘特技
 アルケミスト技能に関係する追加の戦闘特技です。いずれも自動習得の戦闘特技ではありません。

・常に効果を発揮する戦闘特技

《連続賦術》 前提:アルケミスト技能5以上
 主動作で賦術を使用する場合、1回の主動作で賦術を2種類使用できます。判定はそれぞれの賦術ごとに行います。
 同じ賦術を2回使用することはできず、2種類の賦術で対象を変更することはできません。

《カード軽減》 前提:アルケミスト技能5以上
 消費する<マテリアルカード>の枚数が「色×●」となっている賦術について、その枚数が1枚軽減されます。元々1枚である場合はそのままです。
 主動作で複数の対象に賦術を使用する場合、この戦闘特技で基本枚数を軽減してから、対象数分だけ倍化します。

《賦術の極意》 前提:アルケミスト技能7以上
 すべての賦術の効果時間が2倍になります。時間が「一瞬」となっているものには影響しません。また、抵抗が「短縮」の賦術で、それを抵抗された場合の効果時間は1ラウンドのままです。

《賦術強化》 前提:アルケミスト技能7以上
 賦術の行為判定に+1のボーナス修正を得ます。