第7話 「ときに世界は人に覚悟を要求します」


     成長、成長

アルテ GM、GM。質問があります。
GM おや、どうしました。
アルテ 【シュートアロー】の使用条件に「矢または太矢を手に持っている必要がある」とありますが、この条件は<矢筒>などを装備する事で補助動作などで行えると思っていいんですか?
GM そうか、そんな魔法が使えるようになったんですね。呪文を行使する瞬間に手に持っていればOKで、<矢筒>や<えぴら>を装備しているなら収納している矢の内、任意のものを補助動作で、使用する数だけ取り出してかまいませんよ。
アルテ 了解しました。ありがとうございます〜。
GM なお、この「矢を手に持っている」という部分は「矢を持つ側の手を空けておかなければならない」ということを意味しません。武器や盾を持っている手でも「矢を取り出す」ことは可能です。
アルテ おお、嬉しいなあそれは。そのあたり、なぜかルールブックには書いてなかったもので。
GM そですね。まあ、用法:1Hのクロスボウ<ボウガン>で二刀流をやる人もいるでしょう。両手が塞がってるから太矢がつがえられん!? という悲しい事態は起こらないってことで。
アルテ 言われてみれば、確かに(笑)。ちなみに、【シュートアロー】で特殊な矢を打ち出すのはありです? 銀の矢は通常の矢と一緒で良いと思いますが。
GM はい。銀の矢は普通に使えますし、アルケミスト・ワークスで追加された特殊な矢のうち、解説文に「この矢または太矢を用いた攻撃〜」とあるものはすべて、【シュートアロー】でも同様の効果を発揮します。
アルテ 了解しました!
ラウディ アルテもいろいろできるようになってきたな。俺もレベルアップ作業が終わったぜ。ついに7レベルだ!
GM おお、一月足らずで飛躍的に成長したなあ。さて、それではちぃっとばかし犠牲を払ったりしつつ、第7話まで進んで参りました、霧の街の冒険をはじめようか。
ロスト ちょっとかよ!
アルテ ちょっとじゃないね。
アキラ 大分だよ。
ロスト アルテもアキラもありがとうありがとう……(笑)。
アルテ でも、真っ先に失われそうなものはなぜか残ってるような気がします。貞操と言う名の大事なものが。
ルシエル 貞操はとっくに無いんじゃね?
リンダ 貞操は舞台裏で無くなったなあ。

 前話における“蹂躙の撃蹄”コルデンとの遭遇後、【木漏れ日の施療院】のシーンを参照である。

アルテ あれ? 無いの?
アキラ アルテー!?(笑)
ラウディ 舞台裏か。
リンダ 表でなくなったのはロストの貞操だね。アルテはそういう描写はなかったはず。
ロスト ぶっ(笑)。
GM はいはい。とりあえず、経験点がどばっと出たので成長申告をしてもらいますが。今日はちょっといいお知らせがあります。
アルテ おっと、話題を戻しましょう。
リンダ お知らせとは?
GM 皆さんは今回の成長で平均レベル「4.5以上〜5.5未満」のラインを突破し、現れる敵の強さや判定の難易度が一段階上昇しています。これまでの例でいけば次のラインは「5.5以上〜6.5未満」を超えたところなのですが、これが少々上にずれることになりました。「〜7.1未満」を超えるまで基本的な難易度の上昇はありません。
ロスト ええっと……全員7レベルまではランダム遭遇が強くならないってことかな?
GM イエス。
リンダ OK。ああ、それから種族特徴の強化は適用しますか?
GM はい。〔剣の加護/運命変転〕はひっくり返したあとに+1できますし、〔異貌〕ならダメージに+1があります。エルフやドワーフは手つなぎで剣の加護を仲間に与えられるようになりましたね。
リンダ 了解ー。これでイニシア強くなります。
GM さて。お知らせは以上です。では皆さん、技能の成長などレベルアップなどはお済みでありましょうか?
アキラ はい。マギテックが6レベルに上がりました。能力値はブレイクせず。スカウトは上げずに経験点を温存しておこうっと。
アルテ アルテは精神力が上がってボーナスブレイク! +3になりました。魔法にちょっと強くなったよ! 技能の成長はフェアリーテイマー6。【シュートアロー】ですよ、【シュートアロー】! ぴゅーんと飛んでさっくり刺さる!
GM 個人的には【ブレイブハート】が吐くほど嫌いです。
ルシエル えーっと。ルシエルです。能力値は器用が上がりまして、22になりました。腕輪があればブレイクです。技能はプリーストを6に上げまして。【ブレス】いえまつ。
リンダ 呪いを解けるようになったのはありがたい。私はスカウトが6に、エンハンサーが3に上がりました。命中が足りないので【キャッツアイ】を習得。能力値は生命力が上がってブレイクです。
ロスト こちらはソーサラー7になりましたよ。《魔法拡大/確実化》を覚えました。能力値は念願の知力が上がったので、腕輪を買えばボーナスが+5に届く。
GM 使用頻度の高い魔法は増えてませんが、魔力が上がっただけで十分って気がしますね。
ラウディ 俺は生命力が上がったぜ。ブレイクはなし。成長はファイターを7レベルにして《頑強》と《タフネス》を取得。レベルアップと生命力上昇もあわせてHP+34だ。もう俺は倒れるわけにはいかねぇんだよ、ということで頑丈になりました。
GM HPが倍になりやがった(笑)。まあ、今まで以上に遠慮しなくていいってことかな。それでは、本編に入っていこうと思います。話数が切り替わると結構やること多いしね。
一同 はーい。

   惨劇の記憶 26日目「昼」【明かりの灯る館】

GM それではミストキャッスル大脱走組第7話、ミッション「ルーズル奪還」をスタートいたしましょう。まずは……ボタンの餌代100ガメルを払っておいてください。
ロスト はいはい(笑)。払っておきます。
アルテ ボタンかわいいなあボタン。
リンダ よく食う子だ。
ルシエル もしゃもしゃ。
アキラ ボタンのご飯を取った!?
ロスト だから何でルシエルが食うんだよ(笑)。
ルシエル ボタンと僕とではんぶんこ。

 ひどす(笑)。

アキラ 普通に食事は取ってるはずなのに……(笑)。
ロスト ……無言でリンダに追加予算を渡そう。
ルシエル 「おなかすいたー」
リンダ 「ごめんね、うちの子が」
GM では、前回のおさらい。【黒の丘】で無事にサンドリーヌの使用人・クリスを確保したきみたちは、帰り道で蛮族と揉めていたアキラのかつての隣人、マリリンお姉さんを助けたりしつつ、【明かりの灯る館】に戻りました。なお、マリリンさんは現在【娼婦街】をまとめる“月の娘”アリアドネという女性の下で何らかの反政府活動を行っていることを明かしています。それと前回うっかり忘れていたんですが、アキラくんにマリリンさんから<蜂の刺繍入りのハンカチ>を差し上げますね。以前、リンダがマーベルからもらったのと同じやつ。
アキラ もらった〜。メモメモ。
ロスト アリアドネについては危険な情報も拾ってましたかねー、確か。
GM そですね。第二話の後半参照です。でもって、無事、館に戻ったきみたちはサンドリーヌとクリスがちょっといい雰囲気で再会を喜ぶのを横目にしつつ、ロストの探し人であるルーズル氏が【牢獄】に囚われていること、クリスが取引によって手に入れた品物というのが【牢獄】の入り口に仕掛けられた警報と牢の錠前を無効化する<牢獄の鍵>であったことを聞き、救出を引き受けた……というところでしたね。
ロスト 「猶予は、まだある。……万全の体勢で救出に向かいたいと思う」
ラウディ 「お前が焦ってなければ、大丈夫さ。万全で行こうじゃねぇの」
ルシエル 「大丈夫大丈夫! きっとねっ!」 もしゃもしゃ。
ロスト 「ああ……僕は、…大丈夫、だ」 どこか陰りのある表情でそう言います。
アルテ 「ロストお兄ちゃん、そんな顔で会いにいったら、めー」 頭の上にぺちぺちしちゃうよ!「ちゃんといい顔で会いに行こ? ロストお兄ちゃん」
ロスト 「あ、ああ。……そう、だな」
リンダ 「ま、最後まで付き合ってやるわよ。ね、ルシエル」
ルシエル 「うん!」
アキラ 「みんな一緒なら何とかなるさ」
ラウディ 「(肩を竦め)ま、元気が出てるようならいいさ。じゃ、出発するか」
リンダ 「行きましょ」
GM はい。移動は次のtbからになりますね。サンドリーヌの執務室を出てそろそろ出発するか、というところで。このtbの間にも1つイベントがあったりします。
一同 おっ?
GM きみたちが準備を整え、館を出発しようと出口へ向かうと、玄関のところに微妙に見覚えがある使用人が立っています。最初にここへ来た時に案内してくれた人ですね。今日は慇懃な態度じゃなく、やや砕けた口調で声をかけてくるよ。
ロスト 「……」 無言で軽く礼をしておこう。
GM 使用人「もう出立するのか。きみたちがルーズルさんの奪還を引き受けてくれたそうだな。私にとってもあの人は得難い同僚だ。どうか彼のこと、よろしく頼む」 淡々とした口調ながらそう言うと、彼は微かに頭を下げます。
ラウディ 「……あぁ」
アルテ 「みんなで戻ってくるよ! そのときはまた、ごはんのおかわりお願いね!」
ラウディ 「大喰らいが多いからな」 くくっ。
ルシエル 「おかわり! 楽しみだなー」
GM 使用人はアルテやルシエルの言葉に軽く笑うような雰囲気を漂わせますが、再び表情を改めまして。「(ロストに)……そういえば。詳しい事情は知らないが、きみはルーズルさんのかつての主だそうだな。お館様と話されたのならば“終の双翼”についても聞いたのだろう。……一応、忠告しておく。何かしら思うところもあったかも知れないが、間違ってもアレに接触しようなどとは考えないことだ。そんな機会があるとも思わないが、な」
リンダ 「(むっ)ん……そうね」
GM 使用人「それと、これは餞別だ。幸運を祈る」 ラウディ辺りに懐から出した小さな革袋を放ると、使用人は背を向けて館の奥へ去っていきます。中身については後でね。
ラウディ 「ん」 ぱっし。
ロスト 「(使用人を見送りつつ)……“終の双翼”(ルーズルを蘇らせたというバルバロスか……?)」
GM さて、台詞の中に覚えのない名前を聞いたかも知れませんが、きみたちの中に例外がいます。……ルシエルちゃん?
ルシエル お?
ラウディ ルシエルになにか来たぞ。
GM 一行の中で、きみだけは“終の双翼”という二つ名に聞き覚えがあるのです。それも思わず全身が硬直して背中に嫌な汗を感じてしまいそうな聞き覚えが。
ルシエル おお。じゃあ下向いて「終の……」 ボソッと呟いた後、はっとして顔を上げる。
GM じゃあ、ここで画面の下に選択肢が出ます(笑)。

 Q.あなたにふさわしいと思う反応を選んで下さい。

 1.連鎖するかのように過去の情景がきみの脳裏に浮かび上がる。回想シーンへ突入。
 2.鋼の精神の賜物か、はたまた心の自衛作用なのか、きみには何も聞こえなかった。

ルシエル 1番です……(笑)。だってきっと自分をかばって亡くなったあの人を思い出したんだもん……。
GM では、ここで少々長い昔話を。ルシエルは1年程前、お母さんの実妹にあたるフオリさんという叔母さんへのお使いを頼まれ、彼女が住まいとしていたグレンダール神殿 ― 無論正式なものではなく、近隣の住民や信者たちが集まる寄り合い所じみた隠し神殿 ― を訪ねた際、何の前触れもなく大規模な襲撃を仕掛けてきた蛮族たちとの戦闘に運悪く巻き込まれ、瀕死の重傷を負っています。
リンダ そんな過去が。
ルシエル あったんです……(苦笑)。
GM (この辺りの設定は、事前にルシエルのプレイヤーさんと打ち合わせた結果をもとにしています)その後、半年以上に渡る謎の昏睡状態を経て、古代神グレンダールの啓示と共に覚醒することになるのですが。ここからは同様に危うく難を逃れ、半ば瓦礫に埋もれるように倒れていたルシエルを助け出した老ドワーフが、目覚めたルシエルへ推測交じりに語った事件の概要。
ルシエル ああー、トラウマな記憶がー。

 霧の街に住む人族たちの中において、ドワーフは人間に次いで大きな割合を占める種族です。
 彼らドワーフ族が信仰する神々の中でも最大の勢力である“炎武帝”グレンダールの信者たちが、他の神々のそれと同様、信仰という繋がりをきっかけとして小規模なコミュニティを形成することは、霧の街においてもさほど珍しいことではありませんでした。
 人々は日々の糧を得るため、それ以上に野放図な略奪を繰り返す蛮族たちから身を守るため、より確かな繋がりを求めていたのです。

 ルシエルの叔母にあたるフオリさんもまた、そうしたコミュニティを仲間達と協力して維持していた中心人物の一人であり、グレンダール神に仕える力ある神官でした。……しかし。彼女と、その仲間達の不幸は3つ。
 彼女らの中に上位蛮族にさえ対抗し得る実力者が相当数存在したこと。その力を頼りとした力無き人々の求めに応え続けた結果、コミュニティが大きくなりすぎたこと。そして、彼女らの住居たる隠し神殿が【袋小路長屋】のような地の利を持たなかったこと。

 そして蛮族たち、正確には霧の街を支配する蛮族軍の高官は、反抗組織の苗床となりかねないこの動きを見逃しませんでした。隠し神殿に集っていたであろう実力者たちの許容量を遥かに上回る大戦力を叩きつけ、圧倒的な力を持ってこれを粛清したのです。

 この襲撃の中心となったのは、地上軍の主力たるダルクレム大神官“豪将”プトゥート配下のトロール戦士団でしたが、ドレイクやバジリスクといった高位の魔法の使い手が多数参加し、隠し神殿が存在した区画は周囲一帯が丸ごと焼き払われました。
 この粛清によって、フオリをはじめとするコミュニティの中心人物はただ一人の例外もなくその命を散らしたとされています。

 現場に居合わせたルシエルが巻き込まれたのはこの襲撃の初動段階でした。撹乱のために放たれた下級の蛮族から受けた負傷に加えて、その直後、上位蛮族たちが一斉に放った魔法が倒壊させた建物の下敷きになったことで、致命傷となり得るほどの重傷を負い、失血のために意識を失ったのです。この折、ルシエルと行動を共にしていた「とある人物」もまた、その命を落としています。

 そして、襲撃のやり口やその混成ぶり(不仲なドレイクとバジリスクが連携し、正面からの粉砕が信条のトロール達を掃討役を回すなど)から見て、最上位でこの襲撃を指揮していたのは、霧の街における警察機構の長である“終の双翼”なる上位蛮族に間違いない、というのが意識を失ったルシエルを偶然見つけて掘り出した老ドワーフの言。

 この老ドワーフはその見識の深さから、異なるコミュニティの相談役を務めていた人物で、引き上げていく襲撃者たちの姿を見て惨劇を察し、現場を確かめにいったことでルシエルを発見したのです。……以上がルシエルの知る範囲での事件の概要でした。

GM 今まさに、ルシエルの脳裏にはかつて薄れ行く意識の中で見た、人々の暮らしを根こそぎ焼き払う炎が浮かび上がっています。グレンダール神が司る再生を前提とした破壊の炎ではなく、惨劇と慟哭に彩られ、ただただ破滅だけを撒き散らす、紅い炎が。
ルシエル 「“終の双翼”……うぅぅ……」 しゃがみこんで頭を抱えちゃう。
アルテ 「るっしー……?」
アキラ 「ルシエル、どうしたんだ」
ルシエル 「…………頭、痛い……」
ラウディ 「何か思い出したのか」 いつものようにからかわず、傍に佇んでおりましょう。
ロスト 「……少し、休息してから出立に変更しよう」
アルテ 「うん、少し休んでいこ?」 背中さすってあげる
ルシエル 「……ごめんね、そうして」 というわけで1tb休みだね。「ありがとう、アルテねえさん」
アルテ 「ねえさん!? ……ねえさんか〜(ぽー)」
ラウディ 「なんで嬉しそうなんだよ。ルシエルも、謝んな。休みたかったのは俺だってそうさ」
ロスト 「ああ、その通りだ(……それに、僕にもまだ、……心の準備が出来ていない……)」
GM “宵闇の公主”からは自由に館の部屋を使っていいと言われていましたね。適当な使用人を捕まえれば部屋を用意してくれるでしょう。
ロスト 「(……ルーズル。……今更、どんな顔をして会えば良いのか。僕の、罪は……)」
アキラ 「(姉ちゃんかぁ……だいじょうぶかなあ)」
ルシエル 「(“終の双翼”……あいつらが……)」
ラウディ 「悩みがある奴が多くていけねぇな」 そんな皆を見つつ休んだよ!

 というわけで、仮眠を取ってから出かけることに。ちなみに使用人からの餞別は小粒の<消魔の守護石>と<魔晶石>がいくつか入った袋でした。一行はそれぞれの思いに沈みながらも、部屋を借りて休みます。ロストはこの時間に新たな使い魔を作成することに。

GM それでは皆、ぐっすりとではないけど休んでMP満タンまで回復。今日はベッドなのできっと夢見もいいですね。
ルシエル&ロスト いいわけないよ!!
GM あ、ルシエルちゃんには夢の代わりにやってくるものがありまして。ドドーン!
ルシエル ぎゃーー! 眠れなくて遂に幻覚まで!?
GM (違う違う、とジェスチャー)
アルテ るっしーになんか来るらしい。じゃあ、たまにはアキラと一緒に寝よう。
ラウディ 「ここは男部屋だ」 ガラッ。お兄さんは許しませんよ。
アキラ 「え、えっと」 ドキドキして寝れないよ。
アルテ 「だめー?」
ラウディ 「もうそんな年でもねぇだろ」
アルテ 「むー(むくれる)」
ラウディ 「……むくれたって譲らねぇからな」 なんか不機嫌そうに男部屋の扉を閉めちゃう。

 なんか、楽しそうだな(笑)。

アルテ 「いじわるー」 凄く残念そうに女性部屋に戻っていきますよ。しょうがないからるっしーのベッドに潜りこもう。
アキラ 「(ほっとしたような残念なような……)」
ラウディ 「……寝るぞ!」 布団に潜りー。
GM では。うなされながらも、疲労からいつしか眠りについていたルシエルは、その夢とも現実ともつかない感覚の中で、『何か』がきみに近づいてくるかのような気配を覚えます。
ルシエル 「うぅ……誰……?」
GM だが、『それ』を知覚した瞬間、意識に直接落雷したかのような衝撃が走り、声を出す、あるいは意志を返すことも許さないほどの威圧感と共に、強大な気配が、恐らくはその僅かな片鱗をきみの意識へと接触させてくるのが感じられる。
ルシエル 「……!!」 潰されそうです。
GM その欠片にしてなお広大な気配は瞬く間にルシエルの意識を包み込むと、魂に直接語りかけるかのように低く重厚な『声』を発し、次のように語る。

 『恐れてもよい。だが屈してはならぬ』

 『彼の炎は汝が魂に打ち込まれし楔。埋め火の如く燻り、時に野火の如く燃え上がるであろう。然れども、其もまた炎の一なる側面と知れ』


ルシエル 「グレン様グレン様お守り下さい……っ……グレン……ぁあ、ぐれん、さま……!?」

 『迷い、憂いてもよい。だが歩みを止めてはならぬ』

 『汝が辿らんとする道程を見据え、錬鉄の如き意志持て歩みを進めよ。さすれば魂を焦がす炎もまた、汝が意志を燃やす薪とならん』

 『忘るるな、我が愛し子よ。汝が父は汝の道行きと共にあり』


GM 圧倒的な存在感と共に、厳しい戒めの言葉とも、想いの篭もる励ましの言葉とも取れる声音でそれだけを告げると、強大な気配は急速に遠ざかっていきます。ルシエルの胸に、小さくも熱い一雫の炎を残して。
ルシエル 「……はい。はい、グレン様……! あたい、歩きます……!!」
GM そう口にした瞬間、きみは寝台の上で自分が虚空に向け、強い視線を向けていたことに今さらながらに気づく。どうやら皆を起こすようなことはなかったようだ。
ルシエル 「皆を護るんだ……! もうあんなのは嫌だから!」 夜中に一人、静かに燃えています。
ラウディ ルシエル復活!

 ルシエルの過去に深く関わり、ある意味直接の仇とも言える上位蛮族“終の双翼”。彼の出番はもう少し先です。

   アキラ13? 26日目「夜」【露天市場】

 この後、一行は時間に制限があると予想されることを懸念し、「夜」の間に【明かりの灯る館】を出発。【露天市場】に立ち寄り、必需品を補充することにします。幸い道中では魔物との遭遇はなし。ルシエルも元気に進んでいきます。

ラウディ 「元気になったようだな。ただの食いすぎだったのか」
ルシエル 「もう大丈夫。……炎をもらったから」
アキラ 「よくわかんないけど元気になってよかった」
ルシエル 「うん!」
ロスト 「……」 いつものように静かに歩いていく。買い物は、アルテの【シュートアロー】用の矢と、それからアキラに射程の長い<ガン>を買おうか。
GM あ、ノイマンさんの装備屋ですが。正規品は2dして7以上で在庫有、価格は1.5倍ですけど本日限りのサービスがあります。
アルテ お誕生日のサービスみたいな?
GM ノイマン「よぉ! 最近ご無沙汰してるじゃねえか。もっと武器をガンガン壊したり失くしたりして買いにこいよ!」 と何気ない挨拶。
ラウディ 「気安く言うな」
アキラ 「そんなんガンガン出来るほどお金持ちじゃないよ」
GM ノイマン「そうか? ま、いいや。今日はちっと掘り出しモンがあるんだ。兄ちゃん、この長銃どうだい? 滅多に入らない代物だぜ」
アルテ 「それなーに?」
GM ノイマン「フフフ、月に一丁も入荷しない、<最高品質の(※正規品の)ジェザイル>だ! 今日は知り合いが作った専用アタッチメントもつけて、なんと1800ガメルだぜ!」 ノイマンは「専用アタッチメント」とやらを取り出します。
ルシエル 「あたっちめんと……?」
GM ノイマン「うん。……まあ、なんだ。こっそり殺りたい奴がいる人にオススメ」
ロスト サイレンサーーー!?(笑)
アキラ や、闇討ち?(笑)
ラウディ ほうほう。「蛮族を簡単にトマトに出来るモンか」
アルテ 「すごーい、静かに殺せちゃうんだね!」
アキラ 「こっそりって使うときあるのかな……?」
GM どうもサイレンサー&ノズルフラッシュイレイザーのようです。構造を調べてみると、アタッチメントそのものは長持ちはしそうにないですけどね。例えば、ですが……「重要施設を警備している門番を速やかに、無音で片付ける」必要があったりすれば役立ちそうです。
アルテ すぐに使えそうじゃないか(笑)。
ロスト そういうことか(笑)。
ルシエル 長続きしないって事は、何回くらい使えるかは、ダイス目とかで決まるのかな?
GM 回数制限はしません。とりあえずこのミッションが終わるまでは持つとだけ。その後は適当なタイミングで壊れるってことで。壊れたら外れて、ジェザイルは残ります。
アキラ りょうかーい。じゃあそれをもらっていきます。
GM 毎度あり。アキラはスナイパーにクラスチェンジした。あとはいつもの買い物をよろしいように。
ルシエル アキラサーティーン(笑)。

 一行は他に<マギスフィア(中)>をアキラが、<宗匠の腕輪>をルシエルが、<叡智の腕輪>をロストが購入し、矢弾を補充します。時間はここで26日目「深夜」に移行し、一行はしばし移動ルートを相談。なんとなく危ない匂いのする【処刑場】を避け、まだブロックの内容が開いていないC−7を経由することにします(霧の街ブロックマップ 参照)。まずは【鮮血城】に移動しますが、ここで夜間遭遇が発生。

GM きみたちの後方から、どかどかと馬蹄の音に似た物音が聞こえます。重そうな足音とともに、巨大な牛に乗った戦士が一人と、腕利きの傭兵が2人現れますよっと。前者だけ知名度抜いてください。
ラウディ 「あ?」
ロスト 「……余計な手間を」 煩わしげに少し目線を上げる。

 牛に乗った戦士は一応オリジナルの魔物(人族バリエーションですが)。ライダー技能5レベルを持ち、オックス(騎獣バージョン)の特殊能力と合わせて大威力の【トランプル】を使用する暴走オックスの追いはぎです。腕利きの傭兵はどちらもドワーフに設定しました。

リンダ 「牛! 牛はいいわねえ」
アルテ 「ラウディお兄ちゃん、あの牛飼ってもいい!?」 目がきらきら。
アキラ 「え? 飼うの!?」
ラウディ 「……飼う場所あんのかよ」
アルテ 「うしだよ、うし! 飼わないと!」
ルシエル 「やったね兄ちゃん明日はホームランだ! 牛を捕まえるぞぉ〜!」
ロスト 「……どちらが追い剥ぎなのだか(ため息)」
GM 追いはぎ「おお、いい装備してんじゃねえか。頂くぜ! ……つーか、てめえらテンション高ぇな」
ルシエル 「うっしし! その牛、今すぐおいていけぇ!」
アルテ 「うっしっしー! うっしっしー!」
ロスト 「……このとおりだ。怪我をしない内に引き返した方が賢明だぞ」
GM 追いはぎ「なに! 俺のモーちゃんを奪おうってのか! んなこたあ許さねえぞ! てめえら、やっちまえ!」
ラウディ 「ふん、退く気がねえなら手遅れだ。……不運だったな」
ルシエル 「追いはぎに言われる筋合いは無いのよ! 先に剥いだ者が勝ーつ!」

 牛を出しただけでえらい騒ぎです。先制判定は危なげなく一行が奪取。後のことも考えて速攻で沈める作戦のようです。

「どうでもいいけど、ドロップで牛は手に入らない気が……(データ確認)いや、戦利品が自動で<曲がった角>になってるぞ……(笑)」
「ゆ、夢くらい語ってもいいじゃないか! 角だけぽっきりすればいいよ! とりあえず前の傭兵二人が邪魔!」
「先に【ショットガン・バレット】撃っとくね。(ころころ)ええーっ、またピンゾロ!?」
「相変わらずだ(笑)。それなら傭兵は寝かせて放置するか。【スリープ】2倍掛け。(ころころ)2体とも抵抗抜いたぞ」
「ようし、遮蔽がなくなったから、うっしっしに乗ってる人に【アイスボルト】! あ、クリティカルしたよ!」
「道が開いたな。ならライダーに追撃だ。おらぁ! 19点だ!」
「ぐはあ! モーちゃん、来世でも俺のもとに……(ガクリ)」
「やったぁ! 今夜はステーキだね!」
「ブモー!?」
「モーちゃんの命が風前の灯(笑)」

 てな感じで、1ラウンド持たず。一行は戦利品の獲得より消耗を抑えることを優先し、【スリープ】で寝かせた傭兵は放置。主人を失ったモーちゃんは戦利品ではなかったので騎獣としては利用できないものの、飼えるものなら飼いたい、ということでフレーバー的に連れていくことに。

GM では、【鮮血城】のブロックに到着。ここはランダムイベントがありますね。1dを振り足していって15? きみたちは無駄に威圧感のある格好をした2体の蛮族が言い争いをしている場面に遭遇しました。2体は目ざとくきみたちを見つけ、「ちょっとこっちへ来い。聞きたいことがあるんだ」と呼びかけながら近づいてきます。
ラウディ 「あん……?」
アルテ 「なーに?」
GM 蛮族「オレとこいつ、どっちが強そうに見える? スタイル勝負をしていたんだがどうにも決まらん。ここは人族の視点で決めるとしよう」「おお、そうしよう。オレのほうが強そうだろ?」
アルテ ほうほう……筋肉が多いほうが正義じゃダメなのかな。
ロスト アルテ……アキラが泣くよ(笑)。
アルテ アキラは別枠だもん。特別枠にちゃんと入ってる。
アキラ 喜んでいいのかな?
GM とまれ、回答を聞く前にこいつらの種族を決めよう。ラウディ、よろしく。

 結果、2体の蛮族はバジリスクと、『バルバロステイルズ』の追加蛮族であるボガードコマンダー。どちらもボス級と言っていい強敵です。

リンダ どっちもやばい(笑)。「知恵や魔術ならバジリスクでしょう。力ならボガードコマンダーです。つまり、あなたがたはジャンルが違う」 とか言おうか?
アルテ それは二匹同時フラグよ!
アキラ どっちと答えてもろくなことにならなそうだしなー。
リンダ では、「ちょっと後を向いてくれ、その間に決める」ってのはどうだろう。不意討ちで倒す。
ラウディ やってみますか(笑)。
GM そんな手で騙されるかっ!

 数分どう答えるかで喧々諤々。GMがいい加減焦れて時間制限を切ってもまだ決まりません。結局タイムアップとなり、一行が出した答えは……。

リンダ 「ほんとうに きみは ばかだな(さらり)」
アルテ 言ったァー!
GM バジリスク&コマンダー「……死ねっ!」

 というわけで2体まとめて戦闘することに。チャレンジ精神に溢れ過ぎです。2体の蛮族を5m離れたところにまとめて配置し、戦闘開始。先制は一行が奪取しました。

ロスト こいつら協力はしそうにないよね、きっと? バジりんは精神抵抗が低いから寝かせようか。
アルテ 協力はしないと思うけど、弱ったやつを仕留めにはきそうだね。寝てもらおうか。そこで「か、勘違いするなよ! ライバルのお前が寝たら勝負にならないだけだからな!」 とツンデレキックしてきたら笑う。
GM それいいな(笑)。ま、片方寝かせてもう片方だけを乱戦状態にしてしまえば起こされないけどね。いつも通り、先にアキラの射撃?
ルシエル あたいはリンダ、ラウディ、アルテに【セイクリッド・シールド】をかけとくね。(ころころ)成功。
アキラ 【キャッツアイ】【ターゲットサイト】【ショットガン・バレット】×2と使って、3m下がりながら射撃。(ころころ×2)21で命中の14点ずつと、(ころころ×2)17で命中のやっぱり14点。
GM 2発目はコマンダーが回避した。バジリスクに28点、コマンダーに14点通し。
アルテ 通ればラッキーでもう一回【アイスボルト】を2体に。バジリスクには(ころころ)達成値16。にくにくしいコマンダーには(ころころ)アッー!
GM このキャンペーン、ピンゾロ多いよね。
アルテ 仕方がない。バジリスクへのダメージを(ころころ)アアッー!!!
ロスト あら、まぁ。
ルシエル なにこれー(笑)。
アルテ うう、これってダメージが出ないだけ? 追加効果の防護点減少は有効なのかな?
GM ルールブックTによると、威力決定での1ゾロは行為判定自体が自動失敗したものと扱うと書いてありますね。魔法自体が失敗するので、追加効果もありません。
アルテ ざーんねん。了解ですー。
ロスト どうするかなぁ。じゃあ《魔法拡大/数》《魔法拡大/確実化》で2体に2回ずつ【スリープ】してみよう。(ころころ×2)バジリスクに18、(ころころ×2)ごめん、コマンダーには16しか出ない。
GM バジリスクは寝ました。
ラウディ 片方寝るならば大丈夫であろう。通常移動してコマンダーに乱戦宣言の【キャッツアイ】【マッスルベアー】つきで攻撃だ。19!
GM 《カウンター》だけは毎回サイコロを振りますね。今は成功率低いので食らっておきます。
ラウディ 「そらぁっ!」(ころころ)おしくも回らず。21点だ。13点通しか。
GM コマンダー「ぬぅ。人族の分際で、なかなかの太刀筋じゃねえか」
リンダ 「やばいわね。次元が違うわ、こりゃ」 うーん、《カウンター》があると私は接敵しても被害を増やすだけなので、パスします。
GM 了解。では、敵の手番。バジリスクは寝たまま。コマンダーが補助動作で【ガゼルフット】【キャッツアイ】【ビートルスキン】【マッスルベアー】【ジャイアントアーム】【ケンタウロスレッグ】【デーモンフィンガー】【メディテーション】を使用します。
リンダ スゲエ。一気に全戦闘値が上がった。
GM 《全力攻撃》を宣言して、ラウディにパンチ! えっと、命中が……22!
ルシエル こないだまで高くて18とかだったのに、一気に違うゲームみたいになった(笑)。
ラウディ (ころころ)だめだな。さすがにハンパない。
GM コマンダー「ガッハッハ! より強くてカッコイイのはオレサマよ!」 (ころころ)ダメージは28点です。
ラウディ 「ちっ……言うだけあんじゃねぇか!」 笑いつつ、受け。
アルテ 私はラウディお兄ちゃんを癒す。ルシエルは【セイクリッド・ウェポン】をお願い!
ルシエル うん! ラウディに【セイクリッド・ウェポン】! 命中に+1、ダメージに+2です!
アルテ 動かないで【プライマリィヒーリング】をラウディお兄ちゃんにいきまーす。13点回復。「頑張って、お兄ちゃん!」
ラウディ 「おう! おかげで元気いっぱいだ」
リンダ アキラは命中で20が出るかな? コマンダーの回避が19なので。
アルテ 《全力攻撃》のペナいれてそれだっけ?
GM うん。8レベルとは思えない数値だね。
ロスト アキラだけじゃなく、ラウディにも【ファナティシズム】がいるかな。素の命中をラウディが避けるかにもよる?
GM およそ避けられるとは思えないね。つーか【デーモンフィンガー】がある間はすでに6ゾロのみ。
ラウディ さすがに命中22ですとな。
リンダ うむ、まあ絶対に避けられない(笑)。
ロスト OK、【ファナティシズム】いこう。(ころころ)成功。
アキラ ありがとう。これならなんとか。【ターゲットサイト】+【ソリッド・バレット】!

 ひたすら命中を強化したおかげで、アキラの射撃は二発とも命中。ボガードコマンダーのHPを一気に削っていきます。<剣の欠片>で強化されているとはいえ、これはつらい。続くラウディの攻撃は命中値が20とギリギリの命中だったため《カウンター》を試みますが……。

GM (ころころ)嘘ぉ! まさかの出目3。
ラウディ よっしゃ、6ゾロクリティカルで(ころころ)さらに回った! (ころころ)む、ここは〔剣の加護/運命変転〕でクリティカル継続だ。(ころころ)48点だぜ! 「くらい……やがれっ!!!」
ルシエル 「わぁ!」
GM コマンダー「グフッ」 うわあ、ギリギリ倒れはしないが、すごい効いた。次が最後の反撃になるかも。
ラウディ 「ち。倒せると思ったんだけどな」 油断はせず構えるぜ。「来やがれ!」

 ここでコマンダーの反撃。さすがに《全力攻撃》はやめて粘る作戦に出ます。当然ラウディは攻撃を避けられず、21点のダメージを受けますが、単発ではどうということはありません。回避値21の壁はさすがに厚く、アキラの射撃は回避されますが、ルシエルから【ブレス】の支援を受けたラウディは命中値24を叩き出します。コマンダーはヤケクソの《カウンター》を試みるものの、届かず。クリティカルダメージで気絶しました。

ラウディ 「……遅ぇっ!!」 カウンターを抜けて、ばっさりだ!
GM 「ぐわーっ!」 倒れたー。バジリスクを放置していくなら、ここで戦闘終了です。★を1つ差し上げよう。
アルテ 「やったね!」 石化したくない。放っていこう。
ロスト 「……手助けは、要らなかったようだ」
アキラ 「はぁ、どうなるかと思った」
ラウディ 「……まだ寝ている奴がいんな」
ロスト 「そちらは面倒だ。回復を済ませて先を急ごう」
ルシエル 「あい。じゃあバジリスクさんの額に肉って書きま……」
リンダ 「バジリスクが起きないうちに、いきましょ」 ルシエルを掴んで持っていく。
ラウディ 「そうだな。ったく、時間食ったぜ」
ルシエル 「ああぁー(エコー)」

 2度の戦闘を切り抜けた一行は、【鮮血城】に到達。急いではいるものの、それなりに消耗しており、夜間であるため無駄な戦闘を避ける意味もあってここで朝になるまで休息します。
 27日目「朝」の移動では南進し、C−7をオープン。ここは【キルヒア神殿跡】で、丘の上に火を放たれたと思しき教会のような建物が残っていました。興味は引かれたものの、今回はスルー。「昼」にはいよいよ【牢獄】に到達します。

後半へ