『ミストキャッスル』追加ルール・セクション



1.『霧の街』の身分制度

『霧の街』には厳然たる身分制度が存在します。下の身分のものが上の身分のものに逆らうことは許されません。たとえ過失でも下の身分の者が上の身分の者に危害を加えたり、損害を与えたりするとその場で処罰されることになります(ほとんどはその場で殺されます)。
『霧の街』に住むあらゆる人族、蛮族は以下の5階級のいずれかに属するものとします。

  上位蛮族
『霧の街』の支配者階級です。『霧の街』の支配者である“翠将”ヤーハッカゼッシュをはじめとする、魔物レベル6以上の「分類:蛮族」の魔物がこう呼ばれます。階級そのものによる特権などは普通ありませんが(多くはそれ以外の役職を持っています)、実力主義の蛮族社会ではただ強力な蛮族であるというだけで様々な形で優遇されます。

  名誉蛮族
霧の街で特に蛮族に貢献していたり、人族を裏切り蛮族に協力することを誓った人族に与えられる階級です。上位蛮族の指名によって選ばれます。蛮族は名誉蛮族にはなれません。階級的には蛮族よりも上位にあたりますが、実質的には蛮族よりも下にあたります。
 名誉蛮族には<名誉蛮族の腕輪>が与えられ、見ただけでそれと分かるようになっています。

  蛮族
『霧の街』で最も多い階級です。「分類:蛮族」の魔物であれば基本的にこの階級に属します(同じ階級でも強さによって実質的な差は存在します)。蛮族は自由に人族を食料とすることが許されていますが、名誉蛮族や蛮族の奴隷を食料にすることはほとんどありません。

  奴隷
『霧の街』の被支配階級です。蛮族に捕らえられて連れて来られたり、浮民から召し上げられた人族が奴隷になります。奴隷は蛮族や上位蛮族の人足となり、労働力として飼われることになります。名誉蛮族も奴隷を持つことができます。
 奴隷は人族ですが、蛮族に襲われることはほとんどありません。奴隷は主人である蛮族の財産であり、勝手に奪ったり殺したりすることがはばかられるからです。
 奴隷(になったPC)には主人から<奴隷の首輪>を与えられます。この首輪は、奴隷の主人が誰であるかを示すものであり、主人の意思で自由に奴隷の首を絞めて殺せる魔法の品です。従って、奴隷が主人である蛮族に逆らうことは死を意味します。
 一度特定の(名誉)蛮族の奴隷になった場合、基本的に主人が開放してくれない限り、その身分を変えることはできません。別の蛮族の奴隷として譲渡された場合などには主人の変更が認められることはあります。

  浮民(ふみん)
『霧の街』では最下級となる身分です。一切の身分(及び生命の)保障を受けられず、浮民以外から人として扱われることもまれです。ほぼ例外なく霧の街の打ち捨てられた集落や廃墟に身を寄せ合って生活しています。食事も働く手段も与えられず、食料として、また娯楽の道具として蛮族に襲われ、狩られる存在です。
 浮民の大半は誰かの奴隷になりたいと望んでおり、自らの立場に疑問を持ったり、改善しようとする意識を持つものはごくまれです。『霧の街』の外に世界があることも知らないことが多く、逃げ出そうとする発想すら持ちません。


2.「拠点」と「キーパー」に関するルール

『ミストキャッスル』では『霧の街』脱出のためのベースキャンプとなる「拠点」や、その管理者でありPCの後援者となる「キーパー」が設定されることがあります。「拠点」は複数設定されることもありますが、キーパーとなってくれる人物は常に一人だけです。
「現在のキーパーが管理する拠点」では、管理するキーパーによって多少の違いはあるものの、以下の行動を行えます。

  休息(睡眠)
「拠点」では基本的に安全に休息を取ることができます。安全な睡眠は無料の場合もあれば有料の場合もあり、有料の場合は料金が記載されています。

  買い物(矢弾、保存食、たいまつ、ロープ)
矢弾、保存食、たいまつ、ロープは「拠点」ならばどこでも購入できます。そのほかの装備品や消耗品などは、購入できると指示のある場所でなければ購入できません。

  戦利品の売却
魔物から獲得した戦利品や<剣のかけら>を売却することができます。戦利品は通常の売却価格で、<剣の欠片>は現在のキーパーのみ、1つ200Gで買い取ってくれます。『霧の街』には冒険者の店が存在しないため、<剣の欠片>を名誉点に換えることはできません。

  キーパーに金品を預ける
「現在のキーパーが管理する拠点」でのみ行えます。キーパーは、PCの所持金やアイテム、騎獣などを無料で預かってくれます。預けた金品はキャラクターシートに「キーパーに預けた所持金、アイテム」などとして区別するようにしてください。
 万一PTが全滅した結果、装備品や持ち歩いているアイテムを失ったとしても、キーパーに預けた金品は失わずに済みます。ただし、キーパーの信頼を裏切ったり、「全滅表(全滅後の状況はランダムに決定されます)」の結果、キーパーが変更された場合には、預けていたアイテムなどは全て失われてしまいます(PTが全滅した結果、キーパーに何らかの損失を与えてしまい、その補填に消費されることになります)。

  ほこらの作成
「現在のキーパーが管理する拠点」でのみ行えます。小神に仕えるプリーストは、拠点にほこらを作成することで神聖魔法の消費MP上昇をなくすことができます。詳しくは「PCの作成について」を参照してください。


3.タイムバンド(tb)と時間の経過に関するルール

『ミストキャッスル』では一日を「タイムバンド(tb)」と呼ばれる4時間ごとの単位に区切って処理を行います。一日は「朝」「昼」「夕方」「夜」「深夜」「未明」の6つのtbに分けられ、PCたちが移動を行い、イベントを解決すると1tbが経過します。移動したその場所で何もしなくても1tbは経過します。「現在のキーパーが管理する拠点」では基本的にイベントは起こりませんが、休息を取ることができます。


(6〜10時)

(10〜14時)
夕方
(14〜18時)

(18〜22時)
深夜
(22〜2時)
未明
(2〜6時)

  判定の再挑戦について

行為判定には時間のかかるものや、再挑戦によってかかる時間が長くなるものがあります。『霧の街』では基本的に6時間以上が必要となる判定の再挑戦は行えません。

  夜の霧の街

蛮族が支配する『霧の街』の夜は暗く、灯りがなければ(暗視能力を持たない)人族は満足に行動することができません。tbが「夜」「深夜」「未明」の間は、灯りを用意しない限り、視界の悪さによって行為判定に−4のペナルティ修正を受けます。たいまつを使う場合、1tbに2本を消費しなければなりません。
 また、「夜」「深夜」に移動を宣言すると、徘徊している蛮族やならず者に遭遇する可能性があります。移動を宣言したときに2dを振り、出目が「6」以下ならなんらかの魔物に遭遇し、戦闘となります。「夜」「深夜」に移動を行わなければ、この遭遇は発生しません。
 なお、浮民のPCは、この遭遇判定を「未明」にも行います。

  敵視される神官

「拠点」以外の場所で、あるtbに第一の剣ルミエルに連なる神のプリーストが神聖魔法を行使し、tbが経過した場合、次のtbで移動を行わないと敵対的な蛮族に遭遇する場合があります。移動しなかった後、イベントが発生する前に2dし、出目が「6」以下なら蛮族に遭遇し、戦闘となります。

  睡眠と食事

『ミストキャッスル』では、PCの睡眠はルールブックに記載されている3時間ごとではなく、tb単位で考えます。1tb睡眠を取るごとにHPを10%、MPを50%回復することができます。PCは、一日に2tbまで睡眠による回復を行えます。睡眠は「拠点」か、安全に睡眠を行えると指示された場所でのみ取ることが可能です。
 また、1日に1回以上食事を取る必要もあります。保存食を消費してもかまいませんし、食事が摂れる場所で食べてもかまいません。食事を取ることによってtbが経過することはありません。
 「朝」から「未明」までに食事や睡眠を取らなかったPCは、次の「朝」になるとHPとMPの最大値が1点減少し、すべての行為判定に−1のペナルティ修正を受けることになります。このペナルティは食事と睡眠それぞれで累積し、また2日目以降も累積し続けます。食事のペナルティは食事を摂ることによって、睡眠のペナルティは睡眠を取ることによってペナルティ修正を0にリセットすることができます。


4.「ミッション」と「クエスト」に関するルール

『ミストキャッスル』において、PCが受ける依頼や命令などの総称を「ミッション」と呼びます。ミッションは通常の1セッションに相当し、これを解決することによってPCは経験点を得、成長することができます。以下にミッションの進行手順を示します。

 4-1.ミッションの受注

PCは、ミッションを受注していない状態ならいつでも、キーパーの元に移動することによってミッションを受注することができます(キーパーに拠らず、何らかの理由で発生するミッションもあります)。ミッションを受注すると、そのミッションで向かうべき目的地が決まることがあります。『霧の街』は40箇所の「ブロック」と呼ばれるエリアによって分けられており、目的地の場所はあらかじめ決まっていることもあれば、ランダムに決められることもあります。
 多くのミッションは、たとえ失敗に終わっても、達成されるまで1度のキャンペーンの間に何度も受注することができます。また、ミッションの中にはランダムミッションと呼ばれるキーパーが誰であっても受注できるものもあり、これは固定ミッションを受注しているときに受注する場合(あるいはその逆)がありますが、複数のミッションを受注しているものとして、それぞれを達成するごとに処理(⇒ 4-6参照)を行います。

 4-2.ブロックの移動

目的地が決まれば、そこを目指して霧の街を移動することになります。移動は1tbにつき1回だけ行うことができ、「霧の街ブロックMAP(⇒ http://weltende.hp.infoseek.co.jp/2.0/database/mistcastle-map.shtml )」のマス目を一つずつ移動します。移動は隣接しているブロックに対してのみ行え、斜めの移動は行えません。
 移動は基本的に1マスずつになりますが、例外的に2マス進める場合もあります。詳しくは次項を参照してください。なお、霧の街は城壁に囲まれているため、街の外に出るような移動は行えません。  また、移動せずに同じブロックに留まり続けてもかまいません。移動(しなかった)結果として、遭遇が起こることがありますが、これについては前項の「夜の霧の街」「敵視される神官」を参照してください。

 4-3.パラグラフの決定/イベントの発生

空白のブロックに移動すると、その場所のパラグラフ(ブロックの中に現れる施設や地形の総称)がランダムに決定されます。一度決まったパラグラフはそのキャンペーン中に変更されることはありません。  「4-2.ブロックの移動」の際、すでに移動したことのあるブロックを2マス続けて移動する場合は1tbの間に2マス移動することが可能です(通過したブロックは無視して、止まったブロックでイベントが発生することになります)。また、『霧の街』には3箇所、すでにパラグラフが現れているブロックがありますが、これらも移動の際は同様に扱います(通過可能)。  パラグラフが現れると、それに応じたイベントが発生します。必ず発生するものやPCの行動によって誘発されるもの、ランダムに起こるイベントなど様々ですが、移動に伴う遭遇を除き、基本的にはランダムイベントよりも固定イベントが優先されることになります。

 4-4.PCの自主的な行動

イベントを解決した後や、イベントが発生しなかった場合、PCは自主的な行動ができます。これらの行動は、基本的にtbが経過しないものとして扱いします。

 ●薬草やポーションによる回復
 ●買い物や戦利品、<剣のかけら>の売却
 ●拠点でのキーパーへの報告
 ●食事
 ●その他PCが試みたい行動

 4-5.★(ミッションマーク)の獲得

イベントを解決したり、戦闘に勝利するとPCは★を獲得することがあります。これはミッションの進行度を表すものであり、ミッションによっては達成に一定数の★が必要なこともあります。また、獲得した★が多いほどミッション達成時に得られる経験点が多くなります。

 4-6.ミッションの達成/経験点の獲得と成長

ミッションの目的地に辿り着き、そこで発生するクライマックスイベントを解決してキーパーの管理する拠点に戻ればミッションを達成したことになり、経験点を得ることができます。ミッションに失敗した(あるいは放棄した)場合はその旨を依頼人に報告することでミッションは終了します。また、全滅した結果としてキーパーが変更された際も受注している全てのミッションは自動的に失敗します(この場合は依頼人への報告などは行わず、それまどに得た★に応じて即座に経験点を獲得します)。
 ミッションを達成するか、失敗してキーパーの管理する拠点に戻ればその度に経験点を獲得し、成長を行うことができます。ミッションを達成しても拠点に辿り着かなければ経験点の獲得も成長も行えないことに注意してください。
 ミッションを達成した場合には獲得した★一つにつき200点の経験点を、失敗または放棄した場合には★一つにつき100点(6つ目以降は一つ200点)の経験点を得ることができます。また、倒した魔物の数や自動的失敗の分の経験点もこの時点で得ることができます。
 一旦ミッションを達成すれば、どのミッションで得た★であれ全て経験点として計算し、★の数は0に戻ります。こうしたミッションの繰り返しによって『ミストキャッスル』のキャンペーンは進行していきます。一つのキャンペーンで達成するミッションはおおよそ15前後になるでしょう。

  「クエスト」について

『霧の街』を移動しているとき、NPCから「クエスト」を受けることがあります。クエストとはNPCから受ける「無期限の依頼」を指します。ある品物を収集したり、特定の蛮族を討伐するなどの内容があります。クエストはミッションの受注や達成とは異なり、条件を満たせばいつでも達成できます。クエストの達成によって報酬や★を得ることがありますが、この★は次のミッション達成時の経験点に加算されることになります。
 クエストは複数のNPCから同時に複数受けてもかまいませんし、必ずしも達成する必要はありません。クエストを達成すると、同じNPCから続けてクエストを受けることもありえます。


5.敗北と全滅/死亡と蘇生に関する特殊ルール

PCが全員魔物に倒されたり、全員が行動不能に陥ってしまった場合・もしくは魔物に対して降伏した場合、特に指示がない限りPCは全滅します。気絶しただけで死亡してはいなかったキャラクターに止めが刺されるか、持ち物やキーパーに預けていたアイテムが失われるかなどはランダムに決定されます。また、PCが石化したり継続してダメージを受け続ける毒に冒されているなどの効果を受けていた場合もそのPCは死亡します。
 PCが死亡した場合、キーパーに頼めば蘇生が可能です。その身分が奴隷であるならキーパーに10.000Gの借金をして、操霊魔法【リザレクション】をかけてもらうことができます。この場合、蘇生したPCは借金を返済するまで<奴隷の首輪>を外してもらうことができず、『霧の街』を脱出することができません。
 借金をしたくない場合、また身分が浮民であったりキーパーがいない場合は遺体を“塚人いらずの”ムギドに預け、(彼の気のおもむくままに)改造を施された上で蘇生してもらうことが可能です。彼の改造・蘇生技術は「魔改造」と呼ばれる独自のもので、改造後の蘇生を受け入れるなかった場合、二度と蘇生することはできません。魔改造によって蘇生したPCは身体のどこかがランダムに決められた別の生物のものに改造されてしまいます。
 魔改造を受けるPCは6tbの後に蘇生します。複数の遺体を蘇生する場合、PC一人につき6tbが必要です。他のPCもムギドに拘束されるため何もできません。魔改造は“翠将”ヤーハッカゼッシュの住居である「翡翠の塔」で行われる上、ムギド自身の戦闘力が絶大なため(タビット出身のレッサーヴァンパイア)逆らえば殺され、もろともに改造されてしまうでしょう。拘束されている間の食事は供給されるものとします。


6.戦闘からの逃亡に関するルール

PCたちが戦闘から逃亡したい場合、まずラウンド開始時にPC全員が「全力移動」が可能な状態である(乱戦状態ならば前のラウンドに離脱宣言を行い、転倒状態ならば復帰している)必要があります。全員が「全力移動」を行えるなら、PCの手番の開始時にすべてのPCは「冒険者レベル+敏捷度ボーナス」を基準値に判定を行い、最も高い達成値と目標値「戦闘に参加している敵の中で最も高い魔物レベル+7」を見比べ、以下の表に従って結果を決定します。

達成値と目標値の差状況
目標値より2以上低い逃亡を阻まれる。全てのPCが「全力移動」を行ったものとして手番を終了する。
目標値より1低い1体を振り切るが、他の魔物は追いかけてくる。最もレベルの低い魔物1体を取り除き、PCの手番から戦闘を再開する。このラウンド再度逃亡を試みることはできない。
目標値と同じ大通りや人ごみの中を走って逃亡する。魔物を振り切ることはできるが、疲労のためHPの現在値が半分(端数切り上げ)となる。
目標値より1高い全力でそのブロックから逃亡する。魔物を振り切ることはできるが、ランダムに決めた隣のブロックへ移動すること。
目標値より2以上高い安全な場所に逃げ、隠れる。このtbは他に何もできないまま経過する。


7.広範囲の効果と魔法の持続時間などに関するルール

PCが使用する、効果範囲が「1km」以上の魔法の効果は1ブロックをカバーするものとします。また、持続時間が「3時間」以上「1日」未満の魔法の効果は1tbの間有効であるものとします。なお、【剣の加護/運命変転】などの効果は「朝」のタイミングでリセットされます。


                         ― END ―