『新乱戦・簡易ルール』における従来のルールからの変更点

 本キャンペーンの戦闘では、7月20日に発売された『ルールブックT・改訂版』に掲載された「新乱戦・簡易ルール」に準拠した処理を行います。「簡易ルール」は距離の概念をなくし、キャラクターの配置を「前線」を挟んで「自軍後列」「敵軍後列」だけに簡略化したもので、いわゆる「SEコンバット」に近い形式です。
 このルールを運用する上で、従来のSW2.0を遊んできたプレイヤーが理解しておくべき項目を以下に示します。従来のルールをある程度理解していることを前提に、変更のない部分の解説は省略していますので、このキャンペーンが初めて遊ぶSW2.0という方は、ルールブックを先に読んでください。そうでない方も、必要に応じてルールブックを参照してください。

   キャラクターの配置

 「簡易ルール」の戦闘では、戦場を3つのエリアのみに分けて管理します。それぞれ「前線エリア」「自軍後方エリア」「敵軍後方エリア」です。各エリア間の距離は10mで、射程を考えるときはこの距離を基準とします。

  [敵軍後方エリア]<10m>[前線エリア]<10m>[自軍後方エリア]

 ひとつのエリアに自軍と敵軍、双方のキャラクターが存在するとき、そのエリアを乱戦エリアと呼びます。どのエリアも乱戦エリアとなり得、それぞれ「前線乱戦エリア」「敵軍後方乱戦エリア」「自軍後方乱戦エリア」と呼称します。
 「簡易ルール」の基本構造は、両軍の前衛が「前線エリア」で乱戦を行い、それを両軍の後衛が「敵軍/自軍後方エリア」から支援するという形です。「前線エリア」の敵をすべて倒して突破し、「敵軍後方エリア」へ侵入・撃破することで決着が着くことになります。

   戦闘開始時の処理

 GMが戦闘の開始を宣言し、PC、NPC、魔物のそれぞれについて、敵味方どちらの陣営として行動するかを確認したら、以下の手順で戦闘開始の処理を行います。

1.魔物知識判定
 戦闘開始時に、敵対する陣営に正体の分からないキャラクターや魔物がいる場合、PC全員が魔物知識判定を行います。

2.先制判定
 先攻後攻を決めるために、GMが告げた(敵軍に存在するキャラクターのうち最も高い)先制値を目標値に、PC全員が先制判定を行います。
 先制判定においては、例外的に6ゾロが自動成功とならないため、出目「12」で目標値に達しないキャラクターは先制判定に参加できません(必ず失敗する行為判定には挑戦できないのです)。このため、PCが魔物知識判定に失敗した場合でもGMは目標値を公開します。

3.戦力の初期配置
 先攻後攻が決まったら、まず先攻側が自軍のキャラクターを「前線エリア」と「自軍後方エリア」に振り分けて配置します。後攻側はそれを見て、同様にキャラクターを配置します。
 先攻側は、まったく配置しないという選択を含めて、任意のキャラクターを「前線エリア」に配置できます。後攻側は、先攻側が前線にいっさいキャラクターを配置していなくとも最低1人を、先攻側が前線にキャラクターを配置したなら少なくともその半分(端数切り上げ)を前線に配置しなければなりません。
 先攻後攻とも、後方にキャラクターを置かず、すべてのキャラクターを前線に配置してもかまいません。

例)まず先攻側が自由に配置し、 → 後方[ ]<10m>前線[自軍A、B]<10m>後方[自軍C、D、E]

  それを見て後攻側が配置。前線に敵の半分は必要 → 後方[敵軍A、B]<10m>前線[敵軍C-VS-自軍A、B]<10m>後方[自軍C、D、E]

  どちらの陣営も後方は空っぽでもオッケー → 後方[ ]<10m>前線[敵軍A、B、C-VS-自軍A、B、C、D、E]<10m>後方[ ]

 以上の3ステップが終了したなら、先攻側の手番→後攻側の手番→先攻側の手番……と、いずれかの陣営のキャラクターがすべて行動不能になるまで(あるいは降伏するまで)両陣営の手番を繰り返します。それぞれの陣営の手番内において、どのキャラクターから行動するかは手番ごと、独立して順番を決めることができます。

   キャラクターの手番

 キャラクターの手番は、それぞれ「移動」→「主動作」の順で解決されます。「補助動作」は特に注釈されていない限り、自身の手番の間であれば好きなタイミングで何度でも行えます。ただし、移動や主動作を解決している途中に差し挟む(攻撃が命中したのを確認して、補助動作でダメージを増加させる効果を使うなど)ことはできません。

 移動

 従来のルールと同じく、「簡易ルール」における移動も「全力移動」「通常移動」「制限移動」の3つから選択して行います。

全力移動
 「簡易ルール」における全力移動は、「自軍後方エリア」から「敵軍後方エリア」(あるいはその逆)に移動する移動方法となります。ただし、「前線エリア」に敵軍キャラクターが存在している場合には行えません。
 「全力移動」を行うと原則的に主動作が行えなくなること、次の手番の開始時まで回避力判定に−4のペナルティ修正を受けることは従来のルールと同じです。

通常移動
 通常移動では、隣り合うエリアへ移動することができます。敵軍キャラクターのみが存在するエリアに移動した場合、そのエリアは乱戦エリアとなります。
 主動作・補助動作の制限がほとんどないこと、ただし魔法の行使と射出武器攻撃(≒射撃攻撃、後述)が行えないことは従来のルールと同じです。

制限移動
 「簡易ルール」における制限移動は、「エリア間の移動を行わないこと」と同義です。原則的に、すべての主動作・補助動作が可能です。

先攻1ラウンド目の制限
 「簡易ルール」では、エリア間の移動を行わなかったキャラクターは、制限移動したときと同じ主動作・補助動作を行えます。
 ただし、先攻となった陣営のキャラクターのうち、初期配置で前線エリアに配置されたキャラクターは、1ラウンド目のみ「通常移動」を行ったものとして扱います。
 2ラウンド目以降には、この制限は適用されません。また、後方エリアに配置されたキャラクターにはいっさい影響しません。

移動できない場合
 キャラクターは、自身の存在するエリアに敵軍キャラクターがいる(そこが乱戦エリアである)場合、移動できません。また、魔法や特殊能力によって物理的に移動を禁じられる場合もあります。
 移動できないキャラクターは、移動方法を選ぶ必要はなく、制限移動したときと同じ主動作・補助動作を行えます。たとえば「制限移動」のみを禁じる効果を受けたとしても、「通常移動」「全力移動」を選ばなければならないといったことはありません。

乱戦エリアからの離脱
 前項の通り、キャラクターは乱戦エリアに存在する場合、移動することができません。しかし、直前の手番に「乱戦エリアからの離脱」宣言を行っていたキャラクターは、そのエリアから「後退するように」通常移動もしくは全力移動することができます。
 「簡易ルール」では、キャラクターが乱戦エリアより「前」に移動することはできません。乱戦エリアからの離脱は、後退方向にのみ可能です。これは魔法などでの特殊な移動手段を用いた場合や、大きく吹き飛ばす特殊能力などで移動を強制される場合でも同じです。

 主動作、補助動作

 主動作、補助動作で行えることは原則的に従来のルールと同じです。いくつかの補足的な項目については、最後にまとめます。


   射程と広範囲の効果

 「簡易ルール」では、各エリア間の距離が10mに固定され、自軍と敵軍のキャラクターがともに存在するエリアはすべて「乱戦エリア」として扱われます。「乱戦エリア」に存在するキャラクターはすべて乱戦状態であり、「乱戦エリア内にいるが乱戦状態ではない(独立状態)」といった状態はありません。以下に、「簡易ルール」における射程や広範囲の効果の扱いを示します。

 射程

近接攻撃、及び「射程:接触」の魔法や効果
 敵軍キャラクターを対象とする近接攻撃、及び「射程:接触」の魔法や効果は、乱戦エリアにいるキャラクターが、同じく乱戦エリアにいる敵に対してのみ可能です。味方を対象とする場合、術者と対象が同じエリアにいれば、どのエリアでも実行可能です。

射程距離を持つ攻撃や魔法、効果
 10m以上の射程距離を持つ射撃攻撃や魔法、効果は、隣り合うエリアのキャラクターを対象とすることができます。
 さらに、射程距離が20m以上であれば、自軍後方エリアから敵軍後方エリアにいるキャラクターを対象にできます。ただし、前線エリアに敵軍キャラクターが存在する(乱戦エリアである)場合、これが遮蔽として扱われ、戦闘特技《鷹の目》が必要となります。
 射程距離を持つ攻撃や効果であっても、その射程が10m未満である場合、「簡易ルール」では異なるエリアのキャラクターを対象とすることはできません。

乱戦エリアへの射撃攻撃、「形状:射撃」の魔法や効果
 乱戦エリアではないエリアにいるキャラクターが、乱戦エリアのキャラクターを対象として、射撃攻撃や「形状:射撃」の魔法、効果を使用する場合、誤射を起こし、対象はその乱戦エリアにいるキャラクターからランダムに選ばれてしまいます。
 誤射は、外から乱戦エリア内を狙った場合にのみ、発生します。乱戦エリアのキャラクターが、同じく乱戦エリアのキャラクターを対象とした場合には発生しません。また、戦闘特技《精密射撃》や《魔法誘導》によって誤射を回避することが可能です。

 半径10m未満の範囲を対象とする魔法や効果

 魔法や効果が対象とする範囲が、半径10mに満たない場合、それはひとつのエリアを対象とします。各エリア間の距離は10mとされていますが、半径5mを対象とする効果を2つのエリアの中間地点にかけ、両エリアを巻き込むといったことはできません(各エリア間10mというのは抽象的な平均値であり、実際には幅を持っていると考えてください)。

最大対象数
 半径10m未満を対象とする魔法や効果の中には、「半径3m/5」のように、効果範囲とともに同時に対象とできる最大数が示されているものが存在します。
 こうした魔法や効果の場合、対象とするエリアに最大対象数より多いキャラクターが存在していたなら、効果を受けるキャラクターを、ランダムに最大対象数だけ選出します。戦闘特技《魔法制御》を習得しているならば、魔法を使った術者が対象を選出します。
 最大対象数の処理は、対象とするエリアが乱戦エリアとなっているかどうかに関わらず、行われます。

 半径10m以上の範囲を対象とする魔法や効果

 半径10m以上、20m未満の範囲を対象とする魔法や効果では、目標としたエリアと、それに隣接するエリアが対象に含まれます。つまり、後方エリアを目標としたなら前線エリアが、前線エリアを目標としたなら全エリアが対象に含まれます。
 半径20m以上の範囲を対象とする効果は、常に全エリアを対象とします。

 「形状:貫通」の魔法や効果

 4レベルの真語魔法【ライトニング】に代表される、「形状:貫通」の魔法や効果は、それが直接に目標としたキャラクター1体と同時に、術者の存在するエリアと、術者から目標となるキャラクターまでの中間、及びその延長上にあるすべてのエリアに影響を与えます。
 直接に目標となったキャラクターは、必ずその効果を受けます。同時に、影響を与えられるすべてのエリアに存在する、すべてのキャラクターは、それぞれ1dを振り、出目「1〜3」なら効果を受け、「4〜6」なら効果を免れます。
 「形状:貫通」の効果を使用するキャラクター自身は、自由に自身を対象から除外することができます。戦闘特技《魔法制御》を習得しているならば、任意のキャラクターすべてを対象から除外できます。
 なお、乱戦エリアの外から、乱戦エリアのキャラクターを直接の目標に定める場合、戦闘特技《魔法誘導》を習得していなければ誤射が起こります。

 「形状:突破」の魔法や効果

 「簡易ルール」では、長距離を移動しながら攻撃を行う「形状:突破」の魔法や効果は、敵軍キャラクターが存在するエリアに突入することができますが、通過することはできません。たとえば前線エリアが乱戦エリアとなっている場合、自軍後方エリアから前線エリアへ、あるいはその逆に移動する形でのみ使用できます(エリア間の移動をせずにこの効果を使うことはできません)。
 「形状:突破」の効果を受ける対象は、「形状:貫通」と同様に処理されます。使用した結果、使用者は目標としたエリアに位置が変わります。


   細かい補足や変更点

■前線を突破されてしまったら?
 前線のキャラクターのうち、片方の陣営のキャラクターがすべて行動不能(気絶、死亡、石化、睡眠など自力では回復できない状態)になった場合、制圧した陣営のキャラクターは、敵軍後方エリアに移動することができるようになります。
 後方エリアに敵軍キャラクターが移動してきた場合、今度は後方エリアが乱戦エリアとなり、それ以上後退することができない状態で戦闘を続けなければなりません。「乱戦エリアからの離脱」を宣言しても、後方エリアからさらに後退することはできず、後方乱戦エリアから敵を排除しない限り、前線エリアにも移動できなくなります。
 この「背水の陣」と言うべき状態で、戦場からの撤退などが可能かどうかは、状況に応じてGMが判断します(基本的にはできません、というか想定されてないねん)。

■戦闘開始時の初期配置における例外
 透明な魔物や擬態生物、隠密判定によって物陰に潜んでいるキャラクターなど、戦闘開始時点で敵軍にその存在を認識されていないキャラクターは、どのエリアに配置されたかが敵軍に対して秘匿されることになります。こうしたキャラクターが前線に配置された場合、「後攻側は前線に先攻側の少なくとも半分を配置する」ルールの例外として扱い、後攻側のキャラクター配置には影響しないものとします。
 また、魔物から不意打ちを受けるなど、陣形を整える余裕がない状態で自動的に先攻を取られてしまった場合、後攻側のキャラクターは、すべて前線エリアに配置されます。

■補助動作を行えるタイミング
 補助動作は移動の前を含め、キャラクターの手番中、他の動作の途中でないすべてのタイミングで行えます。

■転倒状態から復帰した直後の移動
 転倒したままでは移動することができませんが、補助動作で立ち上がった手番では、通常通り移動を行うことができます。
 なお、転倒させる効果を伴う広範囲の効果に自らを巻き込んだり、近接攻撃を<投げ>で《カウンター》されるなど、自身の手番の途中で転倒した場合、その手番の補助動作では転倒状態から復帰できません(※これはGMの個人的な裁定)。

■ラウンド経過処理の変更
 これまで、キャラクターが発生させた効果の持続時間は、陣営全体の手番開始時に時間経過をカウントしていましたが、これらはキャラクター個人の手番開始時にカウントするようになりました。
 これまで呪歌や【バトルソング】の魔法などで可能だった「自身の行動を後回しにして、呪歌や魔法の効力がある間に味方を行動させる」といった戦術が、すべての魔法や特殊能力で行えます(「この手番で敵にかけた【ダーク・ミスト】の妨害が切れるから、先に攻撃してー」)。

■金属鎧によるクリティカル値上昇
 カテゴリ<金属鎧>を装備していることによる、攻撃者のクリティカル値上昇は、それが武器での攻撃であるかどうかに関わらず、物理ダメージを与えるすべての攻撃に対して適用されます(【シュートアロー】や【ショック】などの魔法に対しても有効)。
 武器攻撃であっても、魔法ダメージを与える攻撃に対しては適用されません。

■投擲攻撃
 これまで、まとめて「射撃攻撃」とされていた攻撃方法は、「射出武器攻撃」と「投擲攻撃」に分けられます。射出武器攻撃とは<ボウ>や<クロスボウ>、<ガン>による攻撃で、こちらは今までと同じルールで処理されます。
 投擲攻撃は、カテゴリ<投擲>の武器を用いた射撃攻撃で、通常移動を行った手番でも行うことができます。また、シューター技能だけでなく、ファイター技能、フェンサー技能でも可能です。
 [選択ルール] この変更により、<閃光石>(⇒『AW』104頁)が戦闘バランスを容易に崩しかねない性能となってしまったことを受け、<閃光石>を直接命中させた場合でも、生命抵抗力判定によって盲目を免れるようになりました。