商都ラスベートの冒険



   ラスベートの歴史と地理   エリアマップ  進行ルール  ブロック解説

 “集いの国”リオスの首都であるラスベートの街は、かつてフェイダン全土をその領土としていた大アイヤール帝国の一都市であったリオスをその前身とする歴史ある街です。ところが、<大破局>に伴う蛮族たちの大侵攻に際して、時の大アイヤール皇帝は皇都での籠城を選択し、その他の街々に対して全戦力の皇都集結を命じました。そのため、リオスの街は蛮族たちによって徹底的な略奪と破壊を受け、灰燼に帰したのです。建物という建物はすべて廃墟となり、<大破局>終結後、帰還した人々による復興においても、ゼロからのスタートを余儀なくされました。

 しかし、瓦礫の中でリオス国の成立を宣し、後に初代議長ラスベートの名で呼ばれることになるこの街にも一つだけ、大アイヤール帝国時代から引き継いだ基盤がありました。それが、かつての都市計画によって敷設されていた人工的な街路、街を放射状に区切る幾何学的な舗装道路です。商業都市としての復興を強く意識していた帰還者たちは、交通の便に優れるこの街路を残すことを選び、ラスベートの街は『十本脚の蜘蛛の街』と呼ばれるほどに機能的な構造を持つ都市として復興したのです。

 ラスベートはフェイダン地方南部の海に接する港湾都市です。北からは雄大な大河コローラが街を東西に二分する形で流れ込み、中央広場の南端で海につながっています。湾には国家議事堂を有するヴェーラ島、南北を港湾施設と歓楽街に分けたアルトゥール島、二つの中洲が浮かび上がり、両島の間は運河となっています。街の西から伸びる街道はトノール・ストリートとしてやはり街の中央を横断し、中央広場に渡るタワーブリッジを経て東の街道まで延びる、というのが街の大まかな構造となっています。


エリアマップ


   進行ルール   エリアマップ  ブロック解説

 ラスベートの街での冒険は、上に示したエリアマップ上を移動することで展開していきます。シティアドベンチャーの性質上、時間に制限がかかることもあり、そうした場合には現在時刻、パーティの現在位置が厳密に管理される必要があります。そのため、ラスベートの冒険では1日を「1時間」単位で区切り、以下に示す手順でイベントの解決と時間の経過を管理します。

 ステップ1.移動先ブロックの決定と移動

 PCは、エリアマップ上で現在いるブロックから、直接ラインでつながっている隣接ブロックをひとつ指定し、移動します。ラスベートの街は交通の便がよく、移動を制限するような要素は基本的に存在しません。隣接ブロックであれば、自由に移動することができます。
 なお、このステップでラスベートの街から出るような移動を行うことはできません。冒険は基本的にラスベートの中で進行しますが、街の外に出る必要が生じた場合には、〔ステップ2.イベントの発生と解決〕で行ってください。

 ステップ2.イベントの発生と解決

 ラスベートは平和な街ではありますが、それでも訪れた場所によっては様々なアクシデントが発生する場合があります。また、PCが解決しようとしている事件があれば、自ら関わりを持とうとする場合もあるでしょう。
 そうしたイベントが発生した場合、PCには何らかのリアクションが求められます。困っているNPCを助けたり、事故を解決したり、時には犯罪者や魔物との戦闘もあるでしょう。特別な対処を必要としなかった、あるいはイベントが発生しなかった場合、PCは平和な街並みを通り過ぎていくことになります。

 ステップ3.自由行動

 移動先のブロックでイベントが発生したあと、PCは自発的な行動を取ることができます。それぞれのPCは1時間の間に、移動時間やイベント解決中に起こった戦闘の時間(戦利品の回収を含む)に加えて、一人2回まで、10分程度の時間が掛かる行動(商店などの施設を利用する、情報収集のために聞き込みを行う、特定の場所を調査するために探索判定を行う、薬草を使用してHPやMPを回復するなど)を行うことができます。
 なお、「自由行動」を行わないことで移動速度を稼ぎ、次のブロックに移動するまでの経過時間を短縮することはできません。これらの行為を行っている間も、PCたちは時間を無駄にすることなく、効率的に移動しているものと考えてください。

 ステップ4.時間経過

 ここまでのひと通りのルーチンを終えた時点で「1時間」が経過します。もし、一人のPCが3回以上「自由行動」を行う場合、あるいはもっと時間のかかる行為を行う場合には、次の〔ステップEX.特別な行動〕で行ってください。
 1時間が経過した時点でPCは移動とイベントの処理を終え、次の移動に取り掛かることができます。ステップ1に戻り、次なる移動先ブロックを決定してください。ラスベートでの冒険は、この繰り返しによって進行していきます。

 ステップEX.特別な行動

 原則的に、ラスベートの冒険は移動を繰り返すことで進行します。しかし、ときには移動せずに現在のブロックに留まり、休息を取ったり時間の掛かる作業を行いたい場合もあるでしょう。その場合、次の1時間では〔ステップ1.移動先ブロックの決定と移動〕を飛ばしてその場に留まることができます。
 これを選択した場合、その場に留まることでイベントが発生する場合を除き、1時間をフルに使って何らかの行動を取ることができます。何らかの対処を必要とするイベントが発生してしまった場合、PCが自由に使える時間は、やはり20分となります。このステップでは、NPCとの会話は10分を要する行動として扱います。
 なお、本キャンペーンにおける時間の進行は「1時間」単位で行われます。特別な行動を取った結果、時間が余ってしまった場合でも、1時間は経過します。


   ブロック解説   エリアマップ  進行ルール

 A−1:ライトニング通り 照明:なし 治安:極めて良好

 中央広場から北西に延びるストリートの外縁部で、庶民的な商店の軒先が整然と並んでいます。清潔感の漂うきれいな商店街で、道行く人々も、思い思いに自分のペースで買い物を楽しんでいます。
 表通りから一歩入れば住宅街です。表通りも裏通りも夜は早く、人通りも絶え、夜陰に包まれます。

 近隣住民の共有物となっている、大きな掲示板が存在します。壁新聞なども張り出されるようです。

 A−2:コローラサイド外縁 照明:なし 治安:極めて良好

 中央広場から北へ、コローラ河の左右に広がる新興の住宅街です。新しい家が整然と並び、人工的な街並みという印象を強く与えます。
 その中に、何棟もの建物が寄り添う、聖銅天使学院(ライフォス・ティダン・シーン・キルヒア各神殿が共同で設立した6+6年制の学院)の校舎群と、隣接するキルヒア神殿を認めることができます。午後には、学院の学生の姿が目立ちます。
 夜間にはほとんど照明はなく、人通りも途絶えます。

 キルヒア神殿、聖銅天使学院が存在します。

 A−3:ライズハイ外縁 照明:ストリート沿いのみ 治安:良好

 中央広場から北東へ延びるライズハイ・ストリートの外縁部です。ストリートに面し、リオス有数の大商会の商館・店舗が建ち並んでいます。それぞれは集客のために派手な看板や店構えを取っており、華やかさをこれでもかとアピールしています。喧騒と活気に満ちた区画であり、観光客を含めてさまざまな人がせわしげに歩き回っています。
 街路に立つ巨大なバークリング門は、ラスベートの富の象徴とも言えるでしょう。
 ストリート沿いは、中央部と同じく、夜遅くまで魔動機の明かりを灯しています。

 ライダーギルドが存在します。

 B−1:午後の日差し通り 照明:なし 治安:極めて良好

 広い庭を持つ邸宅が並ぶ高級住宅街です。思い思いに贅をこらした表門や高い塀が連なり、一般庶民は思わず気圧されるほどの空気を醸し出しています。
 建ち並ぶ邸宅に混じり、広い敷地と塔を備えた、城かと見間違わんばかりの白壁の学舎と学生寮があります。ラスベートでもっとも深い歴史と高い格式を誇る、紫露草女学院です。
 もともとが閑静な住宅街ですが、夜の暗さと静けさは、人などいないが如くです。

 紫露草女学院が存在します。

 B−2:コローラサイド中央 照明:ストリート沿いのみ 治安:極めて良好 ●休息可能

 中央広場から北へ上がるコローラ河と、それに併走するコローラサイド・ストリートに面した一帯です。ストリートに面して宿屋街となっており、何軒もの宿屋が軒を連ねています。ここの宿は、従業員教育が行き届いており、接客も完璧、何より安心して泊まれると評判です。
 宿屋街から奥へ入ると、東にはライズハイ街区とゆるやかにつながる古い街並み。コローラ河を挟んで西には午後の日差し通りにつながっていく高級住宅街が広がっています。街の性格も河で二分されており、二つに割って考えたほうがよい区域と言えます。
 宿屋街には街灯が常設されており、夜も照らされています。奥に入れば、夜は静かなたたずまいを見せるでしょう。

 B−3:ライズハイ中央 照明:ストリート沿いのみ 治安:極めて良好

 歴史と規模の両方においてリオス有数の大商会の商館・店舗が多く建ち並ぶストリートは、ラスベート最大の高級繁華街です。商館や店舗は、外縁部にも増してきらびやかに飾り付けられ、華やかさをこれでもかとアピールしています。これを見ているだけでも、あっという間に一日が過ぎてしまうでしょう。
 ストリートから一歩奥に入れば、ラスベートの最も古い街並みが並びます。雑多な中にも歴史と伝統を感じさせる街並みで、清潔感に溢れています。
 ストリートの街灯や商館は、夜も贅沢に魔動機の明かりを灯しています。裏通りには、ほとんど照明はありません。

 ライフォス神殿、有名ブランド・エルバンシィの本店が存在します。

 C−1:西トノール外縁 照明:西寄りの半分 治安:良好 ●休息可能

 西トノール・ストリートは文化のストリートと呼ばれています。外縁部には高くそびえる飛行船係留塔を中心に空港施設が造られており、向かいには広大な敷地を持つマギテック協会があります。この両施設の周囲には商店や宿屋、酒場が建ち並んでおり、旅人を多く集めるこのあたりは、夜なお明るく、喧騒に満ちています。
 空港から街の中心部に進むと、反対側へ来てしまったかと疑わせるような静かな街並みが見えてきます。ここから中央寄りは『文化のストリート』色が濃くなる一帯で、夜は真っ暗になってしまいます。

 冒険者の店『銀真珠の輝き亭』、空港施設、マギテック協会、いくつかの魔術師の私塾が存在します。

 C−2:西トノール中央 照明:ストリート沿いのみ(時間限定) 治安:良好

 大劇場や博物館、美術館、図書館といった建物が目立つ、文化のストリートと呼ばれる場所です。いずれも有料の民営施設で、装飾した看板が掛けられ、存在を強くアピールしています。
 特に三階建てのテトリィル大劇場は、威風堂々とした建築、派手な看板、多数ののぼりで、ひときわ存在を主張する、このストリートの象徴とも言えるものです。ラスベートの内外から多くの人々が集まり、街路を埋めています。
 裏通りは閑静な住宅街で、昼でも人通りは少なく、夜にはほぼ絶えてしまいます。メインストリートには夜もしばらくは明かりが灯されて賑わいますが、劇場が閉まる夜8時頃にはそれらも消えます。

 大図書館(有料)、アステリア神殿が存在します。

 C−3:中央広場 照明:全域 治安:極めて良好

 白い石畳で舗装されたきれいな円形の広場です。リオスの復興が始まった記念碑的な場所であり、実際に初代の議員たちの名を記した石碑が建てられています。
 広場の南の柵に寄りかかれば、コローラ河を挟んでアルトゥール島の歓楽街が望めます。常設の街灯に加え、この歓楽街の明かりと、コローラ河にかかるタワーブリッジから漏れる明かりのおかげで、夜間でも真っ暗ということはありません。夜遅くまで人通りが残る観光スポットです。

 C−4:東トノール中央 照明:ストリート沿いのみ 治安:極めて良好

 歴史を感じさせる、古い店構えの商館や店舗がストリートに面して並んでいます。この街の建物らしく、集客のための派手な看板は掲げていますが、それに目をやる通行人の数は決して多いとは言えません。これらの商館の明かりと、諸処の街灯が夜間のストリートに明かりを提供していますが、その光は裏手には届きません。

 ティダン神殿、シーン神殿、ザイア神殿が存在します。

 C−5:東トノール外縁 照明:なし 治安:警戒を要する ●休息可能

 ラスベートの中では寂れた区画です。大きな建物はほとんどなく、あばら屋も目立つ、寂しげな街並みが広がっています。人通りは少なく、たまにすれ違う人も生気に欠けています。
 このあたりは夜には真っ暗になり、人通りもほとんどなくなります。重大犯罪こそ稀ですが、人目のない場所や時間帯は、追いはぎや恐喝などの危険に遭遇する可能性が否定できません。

 冒険者の店『二本目の蜘蛛の手亭』が存在します。

 D−1:造船所通り 照明:なし 治安:良好

 商人の国リオスで数少ない、他国に誇るべき職人の技術を継ぐ造船所がコローラ河に沿って建ち並ぶ通りです。造船所の裏側は、北の大森林から伐り出された木材をコローラの流れに乗せて運びこみ、建材としています。工房は河に向かって開かれ、完成時にはそのまま進水できるように建てられています。
 造船所の表側は、ラスベートのメインストリートの一つ、シルバーパールストリートに面しています。広い街路には、造船所に工具や小さな部品を運ぶ大工や造船技師見習いたちがひっきりなしに出入りしており、このストリートを南西に進んでいくと、そうした職人たちの住居が並ぶ下町につながっています。

 グレンダール神殿が存在します。

 D−2:アルトゥール島北 照明:全域 治安:警戒を要する ●休息可能(宿泊料2倍)

 ラスベート最大の歓楽街です。遊興のためのさまざまな建物が並び、道行く客を誘っています。魔動機による照明がそこここに仕掛けられ、夜になっても暗さを感じることはありません。いかがわしい宿や、明け方まで営業している酒場も存在します。
 ラスベートのほかの区域と明らかに異なるのは、狭く入り組んだ迷路のような街区で、一度中に入ってしまうと、出口を探すのも大変です。盗賊ギルド《夜を統べる者たちナイトルーラーズ》の本拠が存在することもあり、犯罪と背中合わせに生きているような地域と言えます。

 裏カジノ《夢の天球》、盗賊ギルド《夜を統べる者たち》が存在します。

 D−3:ゴールドコースト中央 照明:マーケットのみ 治安:スリに注意 ●休息可能

 賑やかなマーケットの広がる下町です。幅広い街路に大きな売り棚を張り出し、さまざまな商品が雑多に並べられています。物価は安いのですが、ライトニング通りの店舗などに比べると粗悪品などが堂々と混じっており、買う側の目利きが問われることでしょう。
 表通りを離れると、決して清潔とは言い難い街並みが広がります。小さな家がごちゃごちゃと並び、浮浪者や物乞いの姿も見られます。

 冒険者の店『黄金への誘い亭』が存在します。

 E−1:シルバーパール外縁 照明:なし 治安:警戒を要する

 造船所通りから郊外に向かうと、河に面した倉庫街にぶつかります。メインストリートから下町に入っていけば、住居と作業場のセットが建ち並ぶ、職人たちの街の光景が飛び込んできます。昼でも人通りは少ないものの、熱心に仕事をしている職人たちの気配に満ちています。大手ブランド・エルバンシィの看板を掲げた、巨大な工房と従業員寮がひときわ目立ちます。
 夜は、非常に静かな区域です。明かりもほとんどありません。郊外には銀真珠の養殖場があり、ストリートの名前の由来となっています。

 銀真珠通り高等学校が存在します。

 E−2:ヴェーラ島 照明:なし 治安:良好

 ヴェーラ島は古くから開発の進んだ島で、落ち着いたきれいな街並みを持っています。白い壁の家々の間を子供たちが駆け抜けていく光景は、この区域の治安の良さを表しています。オープンテラスの飲食店が並ぶ、海に面した通りはラスベートでもっとも心休まる空間であると言われています。甘い菓子を楽しむ女性の姿が目立ちます。
 広大な広場を持つサカロス神殿と、先頃移転してきた国会議事堂もまた観光スポットとなっています。住民たちのみならず、ラスベートの人間なら一度は訪れてみる場所となっています。少々、街路が狭いのは玉に瑕です。

 サカロス神殿、リオス国会議事堂、フリーマーケットが存在します。

 E−3:アルトゥール島南 照明:なし 治安:喧嘩多し

 ラスベート最大の港があり、港湾施設が立ち並ぶ区域です。数多くの倉庫があり、商談のための出張所も設けられています。また、一画は漁港になっており、魚市場が常設されています。
 灯台が一基あって光を投げかけ、未明頃には魚市場周辺に明かりがつきますが、区域全体としては夜はほとんど真っ暗です。

 ラスベート港湾会社、魚市場が存在します。

 E−4:ゴールドコースト外縁 照明:なし 治安:非常に悪い

 荒れ果てた印象を与える区域です。建ち並ぶ古びた家は、その多くの窓が割れ、垣も壊れたまま放置されています。路上のそこかしこにゴミや瓦礫が散乱しており、浮浪者も頻繁に見かけます。特に、ストリートを外れて裏通りに入った場合には、廃墟を思わせる光景が広がります。
 ラスベートでも最も治安の悪い場所のひとつであり、非合法組織同士の争いがあるなど、金品どころか生命の危険も日常的に存在しています。照明はまったくなく、夜間は真っ暗になります。

 盗賊ギルド《街道の赤い焔》が存在します。

エリアマップ  ブロック解説  進行ルール