魔動機文明時代黎明期に<壁の守り人>として活動していたノマリ族の少女で、結い上げた短い金髪と暗紅色の瞳を持つ“導きの星神”ハルーラの神官。自然を味方とする不思議な術を扱う呪術師でもあった。
彼女は生涯に渡り、一時の例外もなく一族伝来の「ノマリ模様」を施した衣装を身に着けていた。ノマリ模様は、渦巻きや楔のような紋様を多用した不思議な模様で、一説には何らかの呪いを退ける魔術が籠められていたとも。また、彼女が持っていた<リヴィールスタッフ>は、魔神の弱点を明らかにし、勝利を引き寄せる力があったとされる。
ノマリ族として家族と共に放浪生活を送っていた彼女は、突然の魔神の襲撃によって家族全員を一度に失った。その窮地を救ったリカント族の戦士キルエイに付き従うようになった彼女は、復讐を誓って<壁の守り人>となり、魔神との戦いに大きく貢献したと伝えられている。
しかしある時、キルエイと共に強力な魔神と相対したカチュアは、戦いの中で負傷したキルエイを背中から短剣で刺して殺害し、直後に自らも命を絶ってしまった。魔神に操られたのだとか、致命傷を負ったキルエイを見かねて介錯したのだとか、様々な憶測が流れたが、この謎の行動によってカチュアは“裏切りの守り人”という汚名で呼ばれるようになった。
彼女が携えていた<リヴィールスタッフ>は、鉱山都市トゥルヒダールのハルーラ神殿に安置されているとされる。
■第二話 追記
カチュアがキルエイを殺したのは、かつて彼女が家族を失ったのが、ノマリ族の呪物を手に入れようとしたキルエイが魔神を誘導したためであり、キルエイもまた家族の仇だったことを知らされたためだった。加えて恩人と慕っていた戦士の私欲にまみれた活動や背後関係を知り、自らも捨て駒とされて魔神の犠牲にされそうになったことが、カチュアの憎しみに火をつけた様子である。
|